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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある10人のハロウィンパーティ The_secret_meeting. 1 10月も2週目となった、とある放課後。 柵川中学校の近くにあるファーストフード店に、珍しいメンバーが集っていた。 「本日はこんな所までわざわざお集まりいただき、ありがとうございます!」 集まった面々に、佐天がにっこり笑い掛ける。 「気にすることないぜい」 初めに答えたのは今日集まったメンバー唯一の男子、土御門。 「礼には及びませんわ」 続いて答えるのは、相変わらず豪奢な扇子を手放さない婚后。その両脇では、湾内と泡浮が微笑んでいる。 「いやーそう言ってもらえると嬉しいです。ターゲットと絶対に鉢合わせない店を考えたら、ここしか思いつかなくて」 と、ここで佐天がキョロキョロと辺りを見回す。 周りの客は皆、佐天と同じ柵川中の制服か、他の平凡な学生服に身を包んでいる。 常盤台やとある高校の制服を身に付けた学生は、婚后たちや土御門の他に誰も見当たらない。 「一応“見張り”もいるので、鉢合わせの心配はないはずなんですけどね」 「カミやんなら青ピと一緒に小萌先生の補習を受けてるんだにゃー」 「御坂さんもいつものファミレスで、初春と白井さんと一緒にいるはずです。 私は補習ってことになってますし、怪しまれることもないと思います」 「手回しも完璧なのですね」 「素晴らしいチームワークですわ」 「もちろんです。やる限りは徹底的にやりますよ! それでは」 コホン、とわざとらしい咳払いを一つして、佐天は高らかに宣言する。 「ここに第一回、『御坂さん応援隊による秘密会議』を始めたいと思いますっ!」 話は先週、セブンスミストでハロウィンパーティを開くことを決めた日まで遡る。 あれから数分後に、美琴は目覚めた。 目覚めた瞬間、上条に膝枕されていることに気付いた美琴が再び漏電したのは無理もないだろう。(幸いにも気絶はせずに済んだ。) 茹でダコのような美琴に合同でのパーティが決まったと告げ、各々の連絡先を交換してから、その日はそれで解散ということになった。 そして、それはみんなでセブンスミストを出た直後に起こった。 「カミやん」 寮に向かって歩き出そうとした上条を、土御門が呼び止めた。 「ん? なんだよ?」 「御坂さんを常盤台の寮まで送って欲しいんだにゃー」 「……はい?」 「だーかーらー。御坂さんを送って来いって言ってるんだにゃー」 流れる一瞬の沈黙。そして、 (ふぇ!? 何!? 何が起こってるの!?) (GJ! GJですよ土御門さんっッッ!!) (まぁなんと素晴らしい提案をなさるのかしらこの殿方は!) 各々が心の中で思い思いのことを叫ぶ。 「いや、だから何でそうなんだよ?」 「よく見てみるんだにゃーカミやん。御坂さんはまだ顔が赤いぜい。熱があるのかもしれない子を一人で帰らしていいと思うのかにゃー?」 「まぁ、言われてみれば……てかお前も一緒に行くだろ? どうせ一緒に帰るんだし」 「いや、俺はちょっと寄る所があるから行けないぜい」 にやりと笑う土御門。サングラスのせいで、その真意を読み取るのは難しい。 「そうなのか?」 「そうなんだにゃー」 土御門の言葉に何も疑問を抱かぬまま、上条は美琴の方へと顔を向ける。 「そういうことで御坂、2人で帰るぞー」 「ふふふ2人!?」 「ほら、持ってる鞄を寄こしなさい。それでは皆様、上条さんたちはお先に失礼します」 「ええっ!? ちょ、ちょっと待ちなさいってば!」 美琴の学生鞄を取り上げて、さっさと歩き出す上条。 真っ赤になって固まっていた美琴だが、鞄を取られてしまったので慌てて追いかける。 「ちょっと待ってやカミやん! ボクも……」 慌てて後を追おうとする青髪ピアス。 しかし、その肩を土御門がガッシリと掴んだ。 「何すんのつっちー! ボクも途中まで同じ方向って知ってるやろ!」 「まぁまぁ落ち着くんだにゃー」 そして、青ピの肩を掴んだまま振り返る。 「そちらのお嬢さんが俺たちに話あるみたいだぜい?」 「へ?」 土御門の言葉につられて、青髪ピアスも一緒に振り向いた。 その視界に飛び込んできたのは、 「ほほう。よくお分かりで♪」 ニヤニヤと笑う少女、佐天涙子の姿であった。 上条と美琴の姿が見えなくなるまで見送った6人は、解散はせずにセブンスミスト近くのファーストフード店に入った。 「それでは、みなさん。いきなりですが本題に入りますね」 話を切り出したのは、もちろん佐天である。 「まぁ、すでに土御門さんはお気付きのようですけど」 左隣に座る土御門に向かって問いかければ、ニヤリとした笑みが返ってきた。 それを肯定と捉え、佐天は話を進める。 「私が言いたいこと、それは、御坂さんと上条さんについてです。 もう誰が見たって明らかですが、御坂さんは間違いなく上条さんに恋してます。なのに!」 佐天はクワっと目を見開いて、言葉に力を込める。 「に、も、か、か、わ、ら、ず! 上条さんは全くそのことに気付いてないと思われます! これは大問題です!!」 そこまで言い切った佐天は、ぐっと握った拳を顔の前に持ってくる。 「だから私、佐天涙子は御坂さんの友達として、御坂さんの恋を全力で応援したいと思いますっ!」 「素敵ですわ佐天さん」 「さすがですわ」 小さな歓声と共に、湾内と泡浮が拍手する。 「もちろん私も同じ気持ちですわよ」 佐天の対面に座る婚后も負けてはいない。 「私、婚后光子も悩める友の為に一肌脱がせていただきますわ!」 そして拳の代わりに、豪奢な扇子を勢いよく開いた。 その様子に満足げな笑みを浮かべた佐天は、土御門と青髪ピアスの方を見据える。 「ということで、お二人にも是非協力していただきたいんです。どうかお願いしますっ!!」 その言葉と同時、強い思いを乗せた女子全員の熱い視線が、2人の男子高校生に注がれた。 しばしの沈黙を挟んだ後、青髪ピアスは降参とでも言うように、手のひらを上に向けて肩をすくめた。 「こんな可愛いコたちに頼まれて断れるわけないやんね」 そして右隣に座る土御門を見る。 「そうやろ、つっちー?」 「そうなんだにゃー。男土御門、喜んで協力させてもらうぜよ」 青髪ピアスと土御門が即答出来なかったのには理由がある。 青髪は姫神、土御門はインデックスやその他大勢といった、美琴同様に上条当麻に想いを寄せる少女たちを知っているからだ。 それでも2人はこの恋を応援することに決めた。なぜなら、 「カミやんに彼女できたら、失恋した女のコがボクのとこ来てくれるかもやしねー」 「そうだにゃー。まぁ俺は舞夏がいてくれればそれでいいんだぜい」 ……とは表面上の答えで。 ステイルの想いを知り、美琴が上条のために戦地へ赴くような少女であることを知る土御門としては、 この2人が結ばれるのが一番いいように思ったのだ。偽海原の想いも知ってはいるが、あれにはあれの「妹」がいるらしいから問題ないだろう。 ちなみに、青髪ピアスは割と本気でそう答えているようだ。 「ありがとうございます! すごく頼りにしますね」 土御門と青髪ピアスの返答に満足した佐天が笑う。 「お2人の協力も得られるとわかりましたし、初春は間違いなく乗ってくれるだろうし。 あとは白井さんを説得するのみですけど、まぁこれは初春と私で何とかします。だから」 佐天はテーブル中央に向かって右手を出す。それを見た5人が、次々と佐天の上に手を重ねていく。 「みなさん! ハロウィンパーティ、張り切っていきましょう!!」 直後、3種類の制服に身を包んだ6人の男女が、一斉に声を上げて団結した。 そういう経緯で先週、佐天涙子率いる『御坂さん応援隊』なるものが発足されたのである。 そして今日は、その記念すべき1回目の秘密会議なのだ。 「それにしても、あの白井さんが協力するとは思いませんでしたわ。佐天さん、あなた一体どのようにして説得なさったの?」 婚后が扇子をパタパタと扇ぎながら佐天に問う。 佐天は白井を説得した時のことを思い起こし、苦笑しながら一言だけ告げた。 「あれは初春の功績です」 「あら、初春さんの?」 そう、白井を説得出来たのは初春のおかげである。 『白井さん。隠し集めていた秘蔵画像集やパソコン部品がありますよね。 御坂さんにバラされた上にデリートされたくなければ、私たちに快く協力して下さい』 『な、何のことかさっぱりわかりませんの』 『ネタは上がってます。もしも協力して下さるなら秘密は守ります。 でも協力して下さらないならパーティには招待しませんから、仮装した御坂さんに会えなくなりますよ? きっと可愛いのに見れないなんて残念ですねー』 『くっ!? 卑怯な!!』 訂正。 活躍したのは、初春改め、黒春である。 「まぁ、それは置いといて! 話を進めましょう」 記憶の中で微笑む黒春の姿を頭の隅に追いやって、佐天は言葉を続ける。 「問題は上条さんが全く御坂さんを意識していないってことだと思うんです。どうやって上条さんに御坂さんを意識させるか、そこがポイントです」 「そうですわね。意識してさえいただければ何か変わるはずですわ」 「照れ隠しでついつい攻撃的になってしまう御坂さんの性格をどうにか出来ればいいんですけどねー」 「けれど性格を変えることが最も難しいのではなくて?」 「私たちが普段目にするような御坂様のお優しい一面を、上条さんにも知っていただければ……」 自らの考えを口にしては黙り込んでしまう少女たち。 早速手詰まりかと思われた矢先、ただ一人黙っていた少年が口を開いた。 「だったらまずは見た目で勝負なんだにゃー」 にやりと笑った土御門は、軽い調子で言葉を続ける。 「お嬢さん方。俺たちが開くのが何のパーティか、そこがヒントだぜい?」 「何の、と申しますと、ハロウィン……ああ!」 「ハロウィン“仮装”パーティですわ!」 「まぁ! つまり、御坂さんのコスプレ姿で上条さんを攻め落とす作戦ですのねっ!!」 目を輝かせて土御門の名案に賛同する少女たちに、土御門は肩を少しだけすくめた。 「攻め落とせるかは別として、少なくとも意識させることは出来ると思うぜい」 「そうと決まれば早速行動です! 初春たちにも連絡を」 携帯電話を取り出した佐天は、指先を忙しく動かし始めた。 「衣装買いに行くの、今週土曜でいいですよね?」 しかし、そんな佐天の携帯電話を、土御門がヒョイと取り上げる。 「いや、連絡するのは御坂さんだけだぜい」 「え? どうしてですか?」 「こうするんだにゃー」 少女たちが見守る中、土御門は何食わぬ顔で文面を打ち直した。 そして、その文面を見た佐天は言う。 「……ほほう。お主もなかなかの策士ですのぉ」 「いやいや、佐天さんほどじゃないぜい」 「では、キューピッドメール送信っ♪」 それは、御坂さん応援隊の作戦1号が実行に移された瞬間であった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある10人のハロウィンパーティ
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小ネタ Go to part3 上条「おい」美琴「なによ」上条「パート2、もう埋まっちまうぞ」美琴「うそっ!? まだ3週間ちょっとよ!パート1は2ヵ月半近くかかってたのに!」上条「何気にばかにするな。ま、作者が増えて来た証だろ」美琴「……まぁ…そりゃそうだけど…」上条「何だよ、もどかしいぞ」美琴「……なんでもないわよ…」上条「…俺達がいちゃいちゃしてるのを見るのが嫌なのか」美琴「ちがっ! …じゃなくて、なんか、こー……やっぱなんでもないっ」上条「はぁー… アレだろ、それ見て、楽しくてにやついてんだろ」美琴「っ!! …そうよ、悪いっ!?」上条「別に悪くはないさ、ていうかキレんな」美琴「……だって……」上条「ほら、もうすぐパート3だ。まだまだ書いてくれるんだから楽しもうぜ、なっ?」美琴「…分かった」上条「ほら、拗ねるなって。笑って終わろうぜ」美琴「………」上条「みんな、俺達が好きなんだ。お互いを好きなんだ。それだけだ、別にからかってはいないぜ?」美琴「分かってる、わよ… …よしっ!」上条「つーわけでみなさん」美琴「次もよろしくね!」上条「御坂がにやにやするいちゃいちゃを随時お待ちしておrぎゃあああ!!」バリバリバリ美琴「よけーな事は言わんでいいっ!」 ――――――Go to part3:http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1264418842/
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前ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある学園の執事喫茶 とある男女の一端覧祭 一端覧祭最終日の今日、空はあいにくの曇り空だ。 吐く息の白さが11月の終わりにしては空気が冷たいことをうかがわせる。 そんな中、御坂美琴は一端覧祭のために開放されている常盤台の学校案内をしていた。 ただの学校紹介に近いのだが、LV5が案内するとあってかなりの賑わいを見せている。 単に御坂美琴にあこがれてます!って女の子もわんさかきているが。 そろそろ頬が固まるんじゃないかな、と思うくらい愛想笑いを振りまきまくったせいか 「疲れた……」 これが客寄せパンダかとしみじみと感じる。 しかし疲れた。今日の学校案内だけが理由ではないのもわかっている。 一昨日の写真の一件で学生寮の生徒全員に追いかけられるわ 昨日は黒子につきあったら一日中つれまわされるわと体力がさすがに持たない。 休憩をもらい、かえるの様に両足を開くというお嬢様らしからぬ格好で椅子にどっかりと座っていると 突然土御門舞夏がやってきた。そして 「御坂ー。上条当麻を後夜祭に誘わなくていいのかー」 意味不明なことを言ってきた。 「な、何よ突然!誰が誰を何に誘うのよっ!」 顔が一瞬で真っ赤になった。自分でも顔が熱いのがわかるので 恥ずかしさから土御門舞夏から視線をはずして明後日の方向を向く。 土御門舞夏はそんなことをみじんも気にしないで続けた。 「知らなかったのかー?一端覧祭の後夜祭に雪が降る時に告白すると成功するっていう伝説があるんだぞー。」 「マジで!?」 明後日の方向を向いていた顔がグリンと土御門のほうへと向けられる。 「マジだぞー。」 (その伝説を流したのは私だけどなー) 今度は土御門舞夏が目だけを明後日の方向へと泳がせた。 まさか去年の悪ふざけがここまで広がるとは思ってなかった。 同じ中学の友達が好きな人が出来た。といってきたので 11月の終わりに雪が降るなんてめったにないことをいいことに 勇気付かせるために言った適当な嘘をついたら雪こそ降らなかったのになぜか彼女は大成功。 その結果、この噂はいつの間にかとても広がっていた。 まあ、せっかくなので御坂にも教えてみたのだが、 案の定、御坂美琴は携帯をとりだし天気予報を念入りに確認し始めた。 (さてー、カメラまた手入れしておくかー) 決定的瞬間を手に入れるべく土御門舞夏は準備を始めた。 「不幸だー。」 上条当麻はいつものセリフを呟いた。 朝起きたら食事がなかった。この一端覧祭ずっと忙しく、買い物を忘れていたのだ。 朝食抜きなのとこの数日の大騒ぎで上条当麻はげっそりしていた。 三日前はは初の執事で緊張の度合いがかなり高かった。 一昨日6階から飛び降りた。 昨日は常盤台のお嬢様からいろいろ質問攻めにあった。 休憩時間はほとんど誰に声をかけられ、その都度クラスメートから殴られる一日だった。 おまけに最後はクラス会議というなの魔女裁判だ。 初日の美琴についてから昨日の常盤台お嬢様大襲来についてまでいろいろと聞かれるわ 土御門と青髪ピアスから連携攻撃を何度も食らうわ吹寄から頭突きされるわ姫神に延々とスタンガンで殴られるわと散々だった。 おかげで体力ゼロの状態で最終日の朝を迎えてしまったわけだ。 「てか、寒いな……雪でも降るのか。」 空を見上げる。見事に厚い雲に覆われていた。 予定も相手もいないのに外にでる必要もなかった気がしてきた。 が、なんとなく外にでたかったのだ。もしかしたら 「美琴の奴に会えるかもしれないしな。」 思い出される日々。ビリビリして怒って騒いで追っかけてきて。 「……上条さんはMなのでしょうか。」 なんか頭痛くなってきた。 だが、それでも御坂美琴の近くにいると心地いいのだ。 その心地いい、が最近その場所にいたい、に変わってきたのも自覚している。 ふと携帯を見る。御坂美琴の番号は登録されているのだから会いたいならボタン一つで連絡が取れるのだが 会うためだけに電話をかけるのはどうもためらわれる。 「はぁ」 一度軽くため息をつき、また一人で街へ向かって歩き始めた。 街は思ったよりもお祭り騒ぎだった。 一端覧祭最終日、どのクラスも最後の出し物に気合を入れているようだ。 と、思ったのだがなんだかそれ以上に 「何でみんな後夜祭に人を誘ってるんだ?」 意識をしなくても後夜祭、という単語が耳に入ってくる。 そのあまりの頻度に頭から?マークを出しながら歩いていると電話が鳴る。相手は土御門。 不幸な予感を感じつつも、電話に出ると 「カミやーん、すまんが学校まで着てにゃー」 「なんでだよ!俺は昨日一日仕事した上に宗教裁判も真っ青の一方通行裁判でもうへとへとですよ!」 「でもなあ、常盤台の生徒がいっぱい来てカミやんを探してるんだにゃー。責任取るぜよ」 なんか不幸が加速している予感がした。 さすがに、会えるかどうかもわからない美琴よりもクラスメートのご機嫌でもとろうと思い学校へとやってきたのだが 「……増えてねーか……」 自分のクラスの前に出来る行列にうんざりとする。 しかも大半が常盤台中の制服を着ている。常盤台の制服がこんな特徴のない廊下に並んでいる姿は正直異常だ。 半目で行列を眺めていると、一人の少女がこちらに気づいた。 「上条様!」 一昨日の少女だ。 「たしか湾内さん?」 「はい、覚えていてくだっさて、光栄です。」 彼女は輝くような笑顔をこちらに向けてきた。 正直、ちょっとまぶしい。彼女はその笑みを崩して口を開いた。 「そういえば上条様、御坂様とはお知り合いなのですか?」 「ん?ああ、まあ友達みたいなものだよ」 「友達……ですか。」 彼女はなんか真剣に考えこんでしまった。 どうしたものかな、と考えていると 「とっとと入ってこい!」 吹寄の怒鳴り声が聞こえた。 「ま、またな!」 頭突きが怖いので適当にきりあてげ教室に入っていった。 「どうしましょう」 湾内は考えていた。 御坂様の友達だと上条様はおっしゃった。 気にしている点は一つ。後夜祭。 (私が誘ってもよいのでしょうか……) 少女は一人悶々としていた。 そして自分が入店する番が回ってきた。 都合よく、自分を案内してくれたのはあのツンツン頭の高校生。 「あの、上条様!」 気弱な少女は精一杯の勇気を振り絞った。 「あともう一踏ん張りか……」 お嬢様の相手を延々とし続けていると時刻は午後4時30を回っている。 5時にこの執事喫茶も終わりとなる。 そして5時半から後夜祭というスケジュールだ。 今日もいろんなことがあった。常盤台のお嬢様達はなんだか興味深々で美琴との関係を聞いてくるわ 土御門舞夏がニヤニヤしながら乱入してくるわそのせいで土御門が役に立たなくなるわ 姫神が執事になったりと盛りだくさんな一日だった。 そういや、舞夏が面白いことを言っていたな、と考えていると 「カミやーん、誰を後夜祭に誘うんだにゃー」 店もさすがに人が減ってきたので手持ち無沙汰にしていたところに土御門が声をかけてきた。 「あー、そういや今日常盤台の子に誘われたな。でも」 まだ言葉の途中なのに土御門からグーで殴られた。 ごぱぁん!と景気のいい音が鳴り響いた。かなり痛い。 「お嬢様から誘われてるだと!モテる男は余裕だにゃー!?」 「そうだそうだ!ボクにもわけて!カミやん病を!」 唐突に青髪ピアスが現れた。こいつは女の子の話をすると必ずいるのはなんでだろう。 そんなわけでぎゃあぎゃあといつもどおりの3馬鹿行動をしていると 「貴様ら!ちゃんと最後までやりなさい!」 いつもどおり吹寄が制止する。 が、今日の3人はそのまま止まらない。ついにはお客がいないのをいいことに アクション映画のクライマックスシーンを開始したそのときだった。 上条の目に入り口にいるお嬢様の姿が映った。 「あれ?」 「ちょろっと、何無視してるのよ。」 お嬢様は電撃姫だった。 「えっと、どうしましたお嬢様」 「べ、別に後夜祭までちょっと暇だったからちょっとケーキ食べようとおもって着てみただけでたいした意味なんてないわよ!ただちょっとアンタに話があるの!」 一気にまくし立てられた。もじもじしてるようにも見えるし、心なしか顔が赤い気もするのはこの部屋が多少暑いからか? 「俺に話?ならあと10分もすればお店終わりだしそれからでいいか?」 「え、うん、じゃあ待ってる。」 というと御坂美琴は走って出て行ってしまった。 「あれ?ケーキを食べにお客としてきたんじゃないのか?」 頭に?マークを浮かべている上条当麻にクラス全員の怒りが炸裂した。 「ど、どうしよう」 とりあえず教室から出てきたものの御坂美琴はテンパってしまっていた。 10分後にはアイツと会って、この後のことを話さないといけない。 (う、うまく誘えるのかな) 乙女モードになっているお嬢様は教室の中の惨劇には気づいていない。 (雪の降る中で、こ、告白して!花火がバーンでふにゃー) と、妄想で溶け始めている脳に衝撃的な一言が飛び込んできた。 「大体、カミやん今日別の女の子に後夜祭に誘われてたんじゃないのかにゃー!」 思考が停止する。目が大きく開いた。 頭が動き出すと色んな考えが浮かぶ。がそのどれもがうまくまとまらない。 表情は虚ろだが頭の中はパニック状態の美琴の前に、上条当麻が現れた。 「美琴。待たせた。で話ってなんだ?」 アイツは平然とやってきた。いつもどおりの顔で、いつもどおりの態度で。 なぜかそれに無償に腹が立った。血が出るんじゃないかというくらいに手を強く握っている。 ぶるぶると体の中心が震える。口がうまく開かない。顔の筋肉に無理やり力を込めて そして 「ふーん。アンタ女の子に誘われてたんだ。よかったわね。とっとと行きなさいよ。」 さっきまで考えていたこととはまったく別の言葉が口から出た。 「美琴?どうした?」 「なんでもないわよっ。馬鹿!」 顔もろくに見れない。見たくない。 自分の中の感情がまったく抑えることが出来ない。ただの嫉妬という黒い感情を認めたくない。 だからそこから走って逃げ出してしまった。 「待て、御坂!」 唐突に走り出した御坂に走りながら声をかける、 が彼女はこちらを振り向かない。必死に追いかける。 走って走って、必死に追いつこうとするが距離はなかなか縮まらない。 それでも走る。絶対にあきらめるわけには行かない。 (何やってるんだろう。私) 一昨日にも似たようなことがあった。 自分以外の女の子が上条当麻を後夜祭に誘っていた。ただそれだけだ。 別に告白でもなんでもない。 なのに自分は思いっきり暴言を吐いて逃げ出した。 しかも、アイツが追ってきてくれたことをどこか喜んでいる。 勇気を振り絞った女の子のことも考えないで。 (ひどい女だ。私……) だからこそ、つかまるわけには行かない。 それに走ってるうちに気づいてしまった。嫉妬をするということは (アイツに自分しか見てほしくないんだ。私は) 人に嫉妬して、感情を抑えることも出来ずに 人を傷つける言葉も吐き出して。御坂美琴という自分がこんな醜いと気づいてしまった。 目に涙が浮かぶのがわかる。 その涙が零れるのだけはこらえて必死に、ただ必死に走った。 学校を飛び出し、わき目も振らずにがむしゃらに走った。 人に何度もぶつかった。けど謝りもしないでただ必死に走った。 気づけばあの橋に来てしまった。ふらふらと欄干に寄りかかる。 冬の空気に晒されている鉄は服を通してもとても冷たく感じられた。 一息ついて、気が緩んだのだろうか。唐突に涙がぽろぽろと落ち始めた。 上を向いて堪えようとするが自然と頬を伝って道路の染みになり、消えていく。 目に映るのは真っ暗な空。雲がかかり星どころか月すら見えない。 そういえば、ここは昔からアイツを追っかけたりするとたどり着く場所ね。 いつもいつもアイツは 「やっと追いついたぜ。」 やっぱり来た。なんでかわからないけど絶対来るって確信はあった。 でもそっちを見ることが出来ない。上を向いたまま口を開く。 「何でここにいるのよ。誘ってくれた子に悪いと思わないの?」 「何でって、確かに誘ってくれた子には悪いけど俺は最初から断ったんだぜ?」 予想外の返事に思わずきょとんとしてしまう。 コイツは人の頼みを断らない奴だから絶対にその子のところに行くと思っていた。 ゆっくりとアイツは歩いてくる。そして何も言わずに隣にやってきて同じように欄干に寄りかかった。 「そりゃ、上条さんだって女の子に誘われれば嬉しいですよ?健全な男子高校生ですから。」 いつもの軽口のようだが、どこか引っかかる。なんかいつもと違う。 「アンタ、何か隠してない?」 そういうと目の前の少年は少々驚いたようだ。が、すぐに小さく微笑んだ。 目の前の少女はさっさと吐け、といった表情で睨み付けて来る。 「隠し事、か」 学園都市は後夜祭の真っ最中となった。ここは静かだが 街の中心からはとても煌びやかなネオンの光、時期外れの花火が見える。 そして、その光を受けて雪が夜空に白く輝き始めた。 「……降ってきたな」 上条当麻は雪の舞う空を見上げた。そしてその雪を見てもう一度少し微笑むと 顔を正面の御坂美琴に向け、言葉を伝えた。 「今から俺がお前に隠してたことを言うよ」 一度かるくため息をついた。そして 「俺はお前が、御坂美琴が好きだ。付き合ってくれないか?」 御坂美琴の思考が停止した。 目を大きく見開いて固まってしまう。今コイツはなんて言った? 私が好き?え? 頭が動き出すと色んな考えが浮かぶ。がそのどれもがうまくまとまらない。 今日はパニックに陥ってばっかりだ。おまけに状況もめまぐるしく変わる。告白するつもりが告白されるし。 そんな慌てふためいている自分を優しい目で見つめている。 「後夜祭で雪が降ってるときに告白すると成功する、だっけか?優しい幻想だよな。今回は俺も頼らせてもらったよ。」 さすがに何の援護もなしに伝えるほどの勇気はありませんでしたー、というアイツの照れ笑いが目に入る。 その笑顔がどんどん滲んでいく。さっき止めた涙がまた溢れてくる。 「私もアンタが……上条当麻が好き……」 涙とともに言葉をこぼした。 そして走って当麻に抱きついた。思い切り抱きついた。ギュッという擬音はこのためにあるのではないか、というくらい 力いっぱい抱きしめた。 上条当麻も御坂美琴を抱きしめた。こっちは優しく抱きしめた。 「ずっとこうしたかった。抱きしめたかった。抱きしめてほしかった。」 当麻が美琴の優しく髪をなでる。美琴はちょっとみっともなく鼻をぐしゅぐしゅといわせると 「なんだろ。嬉しくっても涙ってほんとに止まらないね。」 「あの、御坂さん」 頬がヒクヒクと音を立ててるんじゃないか、というくらいに動いている。 それは今の状況が正直信じられないからだ。 なぜかというと御坂美琴がものすごい幸せそうな顔で抱きついているからで。 というか橋の上で抱きつかれてから離れていない。 しかも抱きつかれている箇所は腕じゃなくて胴体。 そのため上条当麻の右腕は脇の下に美琴の肩があるため腕が変な方向に伸びている。 そろそろ右腕の筋肉がやばい。 「うふふ~」 上条の引きつった笑顔など物ともせず美琴は鼻歌のようなものを歌いながらご機嫌だ。 「あの、御坂さん」 もう一度呼びかけてみる。すると 「御坂さんじゃなくてみ・こ・と!ちゃんと名前で呼ぶこと!ちゃんとしてよね!当麻!」 口を尖らせてちょっと怒ったように言ってくる。そういえばしっかりと呼び方が名前になっている。 そして言うことを言ったらまた顔を摺り寄せてくる。 「えっと、美琴、あのさ」 「何?とーま。とーまとーま」 可愛らしく何度も名前を呼んでくる御坂美琴。そのためちょっとはなれて、と言うことが出来ない。 頬を赤くし、幸せそうな顔でなんども胸に顔を摺り寄せてくる。 なんか自分の周りの雪だけはすぐに溶けてそうな気がするくらい御坂美琴があったかい。 それと反比例して周囲の視線が冷たく痛い。今は雪の降る後夜祭の真っ最中。 つまり他の学生からはこの二人は今成立したカップルにしか見えないわけで。 やっぱり後夜祭の伝説は本当だったんだ!とか 死ねよとか釣り合ってないとか常盤台のお嬢様可愛いとか色々な声が聞こえてくる。 正直、上条当麻は告白してもあまり今までの関係は変わらないのでは?とか思っていたが ふたを開けたらびっくりである。 衝撃の度合い的には夏の暑い日、麦茶だと思って一気飲みしたらしょうゆを水で薄めたものだった感じだ。 「当麻、どうしたのよ?」 美琴が顔を胸に摺り寄せたまま聞いてくる。 あまりに美琴が可愛いのでちょっと戸惑ったが意を決して言葉に出す。 「ちょっとだけ離れ」 「いや」 いえーい即答速攻大否定。言い終わる前に言い返されてしまった。 小さくため息をつくといい加減筋肉がしびれ始めた右手を下ろす。自然と美琴の腰の辺りに手が行くので そのまま腰に手を回した。 それに気を良くしたのか美琴はもっと強く抱きついてきた。 なんか髪からいいにおいがするのでどぎまぎとする。 「なんか、いつもと違いすぎませんか美琴せんせー!」 「でも、これも私なの。」 突然の強い口調。 当麻は少し息をのんだ。 美琴は続ける。 「いつも当麻を雷撃出しながら追いかけてるのも、常盤台のエースって言われるてるのも、お嬢様っぽいのも、 自分でもひどいんじゃないかな、と思ってしまうような醜い嫉妬をするのも、こうして大好きな人に甘えるのも全部本当の私。」 御坂美琴は顔を上げて上条当麻の顔をまっすぐに見据える。その顔はちょっと驚いたような表情を浮かべていた。 「どう思った?」 当麻は笑みを浮かべると 「美琴の事をもっと好きになれそうだな。」 「私はこれ以上当麻を好きになるとさすがにちょっと危険かなー」 雪は静かに降り注ぐ。 一端覧祭はこれで終わりだけど二人の関係はまだプロローグが始まったくらいだ。 前ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある学園の執事喫茶
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前ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/上琴の奇妙な体験 美琴はお風呂を上がり、制服に着替えている途中、いろいろと思いふけっていた。 いろいろ、と言っても内容は上条オンリーだが。 「(この生活……夢みたい…………)」 『夢』 寝ている間に見る物と、将来実現させたい願望の2つの意味を持つ『夢』。 絶対に内緒の話だが、美琴はこの2つの意味で上条との夢を見ていた。 睡眠中の夢では上条とうまくいったり、夢の中でもスルーされたり、種類はいろいろだがとにかく上条がでてくる頻度が多い気がする。 さらに将来の願望という方の意味では、上条と一緒になれたらなー、なんて漏電赤面物の想像(妄想)をしてたりもする。 そんな美琴にとってこの未来は『夢』そのもの。 憧れ以外何ものでもない。 「(5年、かぁ…………5年待てば私もアイツと……け、結婚することになるのかなー……なんて)」 考えるだけで顔が熱くなる。 そして妄想も加速する。 「5年……5年か。 付き合えるなら今のうちに準備しとくことないかな……デートの場所とか、お弁当の内容とか……」 「ちょっと私、心の声が漏れてるから」 「ッ!!? 今の聞こえて……? ってかなんでいるのよ!!」 「タオルあったかなー、と思って。 というか駄々漏れってレベルじゃないわよ。 もうちょっと自重しなさい」 「う……」 自分に指摘されるというのは奇妙な感覚だ。 「って、冷静に考えたらアンタも私なんだから、5年前に同じ失敗してるのよね」 「いやしてないけど?」 「はぁ!? なんで!?」 「そりゃ会話の内容とか行動とかが丸々同じってことはないわよ」 「で、でもさっきのお風呂の出来事とかは同じだったんじゃ……」 「大まかな流れはね? でも今みたいな細かいところは普通に変わってるわよ。 喫茶店の名前も私が5年後に来た時は別の名前だったしね」 「そ、そんな……」 急転降下。 今の未来が確定していないとわかったのだ。 つい今までは、ただ5年間過ごせば上条とくっつけると思っていただけにショックは大きい。 「ねぇ、いくらなんでも落ち込みすぎじゃない? 大まかな流れは変わってないわけだし」 「だ、だって、100%未来がわからないじゃどうなるかわからないし……」 「…………御坂美琴はそんな弱気な人間だったかしら?」 「え?」 「アンタは今まで未来がわかってなかったわけだけど、そんな弱気だった? 」 「…………」 「御坂美琴って人間はどんな困難にも立ち向かっていったでしょ? だったら今回も1つの困難だと思ってどーんと積極的にいきなさい!」 「…………うん、そうしてみる」 自分に元気づけられるというのも不思議な感じだが、実際かなり元気が出た。 弱々しさは消え、1つの決心もついた。 「(5年前に戻ったら…………もうちょっと、いやもっとアプローチしなきゃ、アイツ鈍いしね)」 ♢ ♢ ♢ 2人の美琴が部屋に戻ると、2人の上条が雑談をしながら待っていた。 そして5年後上条がこちらに気づいた。 「お、戻ってきたか。 なんか時間かかったな」 「まあいろいろあってねー、ていうかそろそろ時間じゃない?」 「え? ああ、もうそんな時間か」 今、時計の針は11時45分を指していた。 5年後の2人の話だと、『寝たら戻る』とのことらしいので、これ以降いつ戻ってもおかしくない。 ということは、時間がやってきたらしい。 4人がご飯を食べた机を囲んだところで5年後美琴が5年後上条を促し、5年後上条もうなずく。 「そうだな、最後に何か聞きたいこととかないか?」 5年後の上条の問いかけに、上条と美琴は沈黙する。 聞きたいことがないからではない、あまりに、まだ聞きたいことが多過ぎるのだ。 その膨大な量の中から、上条は一つを選んだ。 「じゃあ……漠然としたことだけど、俺はこれからどうすればいい?」 「……どうすればいい、ってのは、5年前に戻ってからのことだな?」 5年後上条の口調は全てわかっている、という感じだった。 上条はうなずき、話を続ける。 「ああ。そんで、御坂とのことなんだけど……」 「!!」 今までただ聞いていただけの美琴の体がビクッと動く。 まさか自分の名前が出てくると思っていなかった美琴は、横目で上条を見る。 「戻って御坂と会い続けていると、その、結婚することになるんだろ?」 「そりゃもちろん……多分」 「…………正直に言うぞ、今の俺じゃ御坂と結婚してる姿が想像できない」 「ッッッ!!」 美琴の体が先ほど以上に大きく動く。 「(そ、想像できない……? それって、どういうことよ……)」 美琴はジッと上条を見つめるも、彼はそれに気がつかない。 そしてそのまま、上条は抱えていた大きな『悩み』を吐き出した。 「もちろん御坂のことが嫌いってわけじゃないだ。でもなんて言うか、俺は今までに女の子を好きになったことはないし、恋愛ってのがよくわからないっていうかさ。それにそんな変な感じで御坂に会っても御坂に失礼だと思うし……」 上条の悩みは真剣そのものだった。 それに美琴のことを気にかけているのも実に上条らしい悩みだった。 誰とも目線を合わせず、気まずそうにする上条だったが、美琴はなんと声をかけていいのかわかならない。 上条と会わなくなるのだけは絶対にイヤだ。 しかし、彼に拒まれたら、自分はどうすればよいのだろうか。 上条の悩みが美琴に伝染しかけたその時、全てを5年後上条が一蹴した。 「それはあれだ、気にすんな!」 「ッ!!? え、いや、気にすんなって言われても…… 「あのな、俺はお前なんだ。 その俺が気にすんなって言ってるんだからいいんだよ。何も気にしないで今まで通り過ごして問題ないって」 そう言って笑う5年後上条の無駄とも言える自身を前に、美琴は少し気が楽になった。 だが、豪快とも言える性格の5年後とか変わり、少しばかり弱気になっている上条は、まだ納得できていないようだった。 「そ、そうなのか? ……でも御坂のこともあるし……」 「あーもう!! 俺ってこんな面倒くさい性格だっけか!?」 「面倒くさい性格よー」 「おい妻、それはひどくないか……ってまあそれはいい。 この際お前ら二人でちゃんと話し合えよ。 俺らははずすからさ」 「え、いや、ちょっと待……」 上条が言い終わる前に、5年後の二人は寝室へと消えて行った。 しっかりと手を繋いで。 残された2人には、当然のように沈黙が訪れる。 「「…………」」 上条はこちらを見てくれない、やはり相当悩んでいるようだ。 だが、美琴の答えは決まっている。 そして今の美琴にそれは伝える「勇気」がある。 さらに、その『先』を言う勇気もだ。 「(大丈夫よ、大丈夫。 自分の気持ちを、素直に伝えるだけ……それだけだから)」 美琴は、1つ大きく深呼吸をし、自分の想いを伝え始める。 「…………そ、そそんなのいいに決まってるじゃない。 5年前に戻ったら、会わないってのおかしいわよ」 「え? いやでも、それだとこの未来になる可能性が高いんだぞ?」 「だ、だから……」 思わず言葉に詰まる。 しかし言わないわけにはいかない。 今言わなければ、『この』未来は訪れないだろう。 美琴はもう一度深く深呼吸をした後、まっすぐ上条の顔を見て、 「私は、アンタと一緒にいたいの。 会わない、なんてのは、嫌」 はっきりとした口調で、そういった。 迷いの一切無い、言葉だった。 上条は一瞬戸惑ったようだったが、美琴の変わらない意志を感じたのか、強張っていた顔が緩んだ。 「……そうか、わかった。 まあホントのこと言うと、俺だって会わないってのは嫌だしな。 どうなるかわからないけど……これからもよろしく頼む」 「ッ! う、うん!!」 美琴は大きくうなずいた。 また上条と一緒にいることができることが、彼女に安心感を与え、上条同様強張っていた顔を緩ませた。 しかし、まだ終わりではない。 また大チャンスの途中だと、美琴は思っていたのだから、再び顔も心も引き締める。 自らの5年後のために、今ここで積極的に行動しておくべきここを逃すべきではない。 「よし、んじゃあの2人を呼んでくるか」 上条は立ち上がり、5年後の自分たちがいる寝室へ行こうとしたのだが、 「ちょ、ちょっと待った!! 」 美琴は勇気を振り絞って、震えるような声で上条を呼び止めた。 「ん? なんだ?」 「その……よ、よよければ…………つ、作ってあげよっか?」 「?? 作るって何を? タイムマシンか?」 「バカかアンタは!! そんなもん作れるなら私は今頃博士号とってノーベル賞もらって世界的有名人よ!!」 「じゃあなんだよ、上条さんにもわかるように言ってくれよ」 「だ、だから、……理を……」 「いや聞こえないんですが……」 「だからっ! その! りょ……料理…………」 「料理?」 上条は余程予想外だったのか目を丸くしていた。 「ちょ、ちょっと、返事くらいしてよね!」 「あ、ごめん。 なんかあっけに取られてたっていうか……でもなんで料理なんだ?」 「なんでって……えーと…………さ、さっき晩ご飯食べてた時、ちらちらこっち見てたでしょ」 「え……気づいてました?」 「さすがにあれだけ見られれば気づくわよ、アンタじゃないんだから」 「それはどういう意味だ?」 「と、ともかく! 食べ終わった後も美味かったとか、また食べたいとか言ってたでしょ? だから あ、アンタさえよければ、作るけど……どう、かな?」 言った、言い切った。 告白でもなく、ただ料理の話なのに心音がヤバい。 美琴は顔の紅潮を隠すかのように俯き、上条の返事を待つ。 が、上条からの返答は思いの他、早かった。 「まあ……御坂がいいって言うなら、作ってもらおうかな」 「ほ、ほんとに!?」 美琴は顔を上げ、上条を見る。 そこに立っていた上条は少し驚いたような表情をしていた。 「ああ。 ……なんで御坂が喜んでるんだ? 普通逆じゃね?」 「う、うるさいわね!! そんな細かいこと気にしなくていいのよ!!」 「細かいか?」 「いいから!! そ、そうだ。 私は2人を呼んでくるからちょっと待ってて」 「お、おう、わかった」 上条を気迫で強引に押し込み、美琴は足早に寝室へ入った。 もう上条と顔を合わしている事自体が限界だった。 「(やった……やったやった!! これでちょっとは進展する……はず、よね? 私にお礼言っておかないと)」 美琴はちょっぴり薄暗い寝室に入り、奥のクローゼットと思われる物の前にいる5年後2人の元へ歩み寄る。 「(ん? 何か話してる……?)」 小さいが聞こえる話し声。 L字型の部屋のため、2人の位置からこちらは見えない。 気になった美琴はこっそりと聞き耳をたててみる。 そこで聞こえてきた会話は――――― 「上手く話し合えてるかね、5年前の俺達は」 「大丈夫よ。 なんたって私たちなんだから」 「ははっ、まあそれもそうだな」 「それにしても、今の当麻じゃありえないわね。 私と結婚することが考えられないなんて言うなんて。 今じゃ毎日べったりなのにねー」 「ほんとだよ、美琴と結婚したことで上条さんは超幸せ者ですからねー。 でも、べったりなのはそっちじゃないか?」 そして、5年後上条は5年後美琴を抱き寄せる。 5年後美琴も待ってました、と言わんばかりに両手を上条の背に回す。 「んー? それはどうかなー」 「今もべったりじゃん、この可愛いやつめ! …………まあ、今でも『考えられない』っちゃあ考えられないな」 「それはどういう意味でかしら?」 「そりゃもちろん、美琴なしの生活が『考えられない』って意味で、な」 「えへへ……私もよ?」 そして、2人は見つめ合い、距離が縮まる――――― 「――――――――ッ!!??!?!!??!??!?」 声にならない叫びとはこういうことを言うのだろう。 美琴は2人と話すことなく、リビングへ超ダッシュでリターンした。 これには上条も驚いたらしく、 「おお!!? ど、どうした!? 呼びに行っただけで驚くわけないし……変な虫でも見たのか!?」 「ち、違っ、そ、そうじゃなくて…………!!!」 「じゃ、じゃあなんだよ、5年後の俺らが関係しt」 「だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!!!!!! ア、アンタはしゃべんなっての!!!!!!!!」 「ちょ!! 何度目だよ!! 室内で電撃はマズいだろ!! 落ち着けって!!」 美琴の頭に上条の右手が置かれると、放電はピタリと治まった。 「あ、あの!! 手が……頭に……」 「こうでもしないと放電するんだろうが!! で? 何があったんだよ」 「何って……それは……」 自分が見た状況を、まともに話せるわけがなかった。 「(あ、ああ、アイツと、わ、わた、わ、私が…………キs――――――――)」 上条の声が遠くなっていき、美琴は倒れた。 ♢ ♢ ♢ どれくらいの時間が経ったのだろうか。 寒いような、暑いような、なんとも言えない奇妙な感覚。 この感じは初めてではない。 つい最近、味わったことがある感覚だ。 「う……うーん……」 頭が冴えない。 思考が安定しない。 それでも体内時計が起きろと言っているのだろうか、上条は上半身を半ば強引に起こした。 「………………ここは……俺んちだよな」 右手で目をこすり、それでも視界はまだぼんやりとしているが、室内を見回す。 そしてようやく状況を把握した上条は、大きなあくびをし 「そうか……戻ってきたのか」 本当に1日の出来事とは思えないくらい、濃い1日だった。 急な5年後へのタイムスリップ、そこで出会った自分の姿。 さらにはまだ20歳だと言うのに、結婚して家庭を持ち、さらに自分で店まで経営しているという超展開。 さらにさらに、その相手と言うのが 「まさか御坂だとはなぁ……」 上条は一応夢の可能性も考え、携帯電話に手を伸ばし日付を確認してみたが、確かに1日時間が経っていた。 「やっぱ夢じゃないよな。 さて……どうしたものか…………ん?」 不意に右手に襲った柔らかい感触。 それに妙に膨らんでいる布団。 「……待てよ、ここベッドだよな。 てことは今のインデックス…………」 上条からサーっと血の気が引いた。 マズい、これはマズい。 どうやら戻って来たのはいいが、いつもの風呂に戻してはくれなかったようだ。 しかも今ので彼女は目を覚ましたらしく、もぞもぞと動き出していた。 これは朝から噛みつきのフルコースですね、わかります。と覚悟を決め、上条は目を閉じた。 が、 「何よもう…………朝っぱらからいい度胸してるわね……黒子」 「………………あれ?」 この声はインデックスではない。 服装もいつもの『歩く協会』でなければ、髪色も銀ではなく栗色。 頭まですっぽりとかぶっていた布団から姿を現したのは、もうお分かりだろう。 「黒子……覚悟はできて…………あれ?」 「よ、よう…………御坂」 美琴はきょろきょろと部屋を見回す。 自分が今置かれている状況を的確に把握するため、部屋の隅から隅まで見回しているように上条は思えた。 そして最後にじっと上条を見つめたかと思うと、急激に顔を紅潮させ、 「…………ちょ、ちょ、あ、アンタ……な、何触ってんのよ!!」 「ま、待て待て待て待て待ってくださいお願いします上条さんちの家電が死んじゃうから頼むから待ってくれ!!!!!」 「ちょっ……!」 部屋に紫電が走る、前に間一髪上条の右腕が美琴の頭に届いた。 しかしそれは美琴にとってはたまったもんじゃない。 なぜなら現在の状況は「ベッドの上」で「男女が2人」、しかも「至近距離」で「頭に手を」おかれているからだ。 しかし上条だってたまったもんじゃない。 この右手を離したらきっと家電はお亡くなりになってしまうだろう。 「御坂、落ち着け。 落ち着いて電撃を止めてくれ。 いやマジで」 「こ、この状況で落ち着けるわけないじゃない!!! そ、そ、それにアンタさっき、さ、さ、触ったでしょ!!」 「ち、違う! あれは不可抗力だ!! まさかお前が隣にいるって知らなかっただけで……」 美琴の『胸』を触ってしまったことは事実。 上条は思わず右手に力が入ってしまったのだが、美琴にはそれが心地よ過ぎたらしく、 「ちょ、ちょっと、手、強い……(いいけど)」 「あ、ごめん……もう大丈夫か?」 「う、うん、多分」 「いや多分じゃ困るんだけど」 まあ実際大丈夫だったわけで、2人はベッドから下りてようやく落ち着いた。 ……わけがなかった。 インデックスの書き置きと思われる『小萌の家に行ってくるんだよ』、的な置き手紙が置かれていた机を2人で囲んで座るも、 「(御坂と結婚してたんだよな、しかも夢じゃないんだよな……向こうにいるときはなんともなかったけど、顔見れねぇよ……)」 「(こ、コイツと結婚……結婚!? な、なんか、なんか、あっちでもいろいろあったけども! 最後に『アレ』も見ちゃったし……そのせいで2人にはお礼言い損ねたけど……そ、それはともかくこうして現実に戻ってみると……もう顔見れないわよ……)」 と、上条は目線を泳がせ、美琴はやっぱり俯いていた。 美琴はともかく、さすがの上条でも『結婚』しているという未来を突きつけられれば、相手を意識してしまうものだ。 というか、しないほうがおかしい。 「あー……なんだほら、なんか飲むか!? お茶とかコーヒーとかならあるけど……」 「あ、うん…………じゃあコーヒー…………コーヒー……」 2人が『コーヒー』から連想したもの、それは5年後の2人の姿と写真で見た、 「「(*1)」」 再び2人は沈黙する。 なんというか、胸がむずむずするような変な感覚を上条は覚えていた。 「え、えーと、だな…………そうだ!! 今、何時なんだろうな」 会話が思い浮かばな過ぎて、というよりは最早何を言っても未来の自分たちの姿を思い出してしまいそうで、苦し紛れだった。 しかし、 「えと……って、何これ!?」 「ど、どうした!?」 美琴の急な大声に驚いた上条は、思わず彼女の携帯を覗き込んだ。 するとその画面には、 「着信108件って……しかもほぼ白井か」 相当美琴のことを心配していたのだろう。 もちろん黒子以外の名前も多々あり、美琴の人望の凄さが見て取れた。 上条も自分の携帯を見てみたのだが、 「(…………2件かよ。 しかも土御門と小萌先生とか絶対補習関連だろ。 え、何? 俺って人望ないの?)」 無駄に落ち込む上条だった。 「ちょっと何暗い顔してんの? 大丈夫?」 「ああ……大丈夫だ。 そういや 向こうと同じだけ時間が過ぎてるなら丸1日時間が過ぎてるんだったな」 「そうなのよ、すっかり忘れてたけど。 こうしちゃいられないわね」 そう言い終わると、美琴は側に落ちていた自分のカバンと靴を拾い上げ、 「ごめん、今日はもう帰るわね! みんなにかなり心配かけちゃってるみたいだし……」 「お、おう、気をつけて帰れよ」 急いで玄関に走る美琴の後を追い、上条も玄関へと進む。 かなり慌てている彼女だったが、靴を履いたところで、 「あ……」 「どうした?」 それまで慌ただしく動いていた美琴の動きがピタリと止まった。 ドアの方を向いたままピクリとも動かない。 「おい、大丈夫か?」 と、声をかけてみるも、彼女は石のように動かない。 一体なんなんだ、と上条が顔を覗き込もうと一歩すすんだ時。 「あ、あの!!」 美琴が勢いよく振り返った。 そしてそのまま間髪入れずに、こういった。 「りょ、料理は、ちゃんと作りに来るから!! また連絡するからちゃんと携帯持っておきなさいよ!!」 「え、おい、御坂……って行っちゃったよ。 てか早いな!!」 言い終わるや否や、美琴は猛ダッシュで上条の部屋を去って行った。 そして残された上条には、ほぼ一日ぶりの静寂が訪れる。 「なんか、静かだな……」 入り口のドアを閉め、完全に1人の状態。 そして上条はこの1日にあったことを改めて思い出していた。 急にタイムスリップして、美琴とベンチで寝ていたこと。 興味津々で5年後の街を2人で見て回ったこと。 ドキドキしながら5年後の自分を尾行したこと。 5年後の自分とその結婚相手である美琴に会ったころ。 2人が想像を絶するぐらいラブラブだったこと。 料理が美味しかったこと。 自分が美琴と2人で喫茶店を経営しているということ。 美琴が漏電しまくったこと。 そして、美琴に一緒にいたいと言われたこと、料理を作ると言ってくれたこと 大変だったこともあったが、全て楽しかった。 そして全てを振り返り終わった上条は、一言呟く。 「こんなの……意識するに決まってるよなぁ……」 上条と美琴の未来。 一度未来を見たものの、まだまだどうなるかはわからない。 それは今から2人の努力によって、作られていく―――――――― T H E E N D ! ! 前ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/上琴の奇妙な体験
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居場所 【本文】 美琴サイド ◆ 上条サイド ◆|◆ クリスマス ◆ 【著者】 月見里(12-676)氏 【初出】 2011/12/22 初投稿 【最終スレ投下日】 2012/12/26
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18スレ目ログ ____ ________________ 18-10 夢旅人(15-189) ミサカネットワーク上のアリア ~Aria_ on_ MISAKA-NETWORK 18-29 くまのこ(17-598) もし学園都市最強の電撃使いが初めからデレていたら 18-77 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 5 第5話『プレゼントタイム』 18-106 くまのこ(17-598) とある不幸な都市伝説 7 3日目 中編 18-110 くまのこ(17-598) 小ネタ 未来的日本昔話 「ビリビリ」 18-127 たくみ(18-126) 何かのプロローグ 1 18-137 たくみ(18-126) 何かのプロローグ 2 18-156 ひろたか(18-154) 八月の詩 1 18-166 ひろたか(18-154) 八月の詩 2 18-173 月見里(12-676) 洒涙雨 1 ―前編― 18-192 夢旅人(15-189) 灯籠流し ~Love_comes_quickly 1 前編 18-201 くまのこ(17-598) もし常盤台の超電磁砲が初めからデレていたら 18-206 ひろたか(18-154) 八月の詩 3 18-214 かぺら(5-906) 夏休みの終わりには 18-231 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 13 恋、はじまる 18-242 17-491 上条さんを悩ませたかったんです ガールズサイド(ほとんど美琴) 18-260 夢旅人(15-189) 灯籠流し ~Love_comes_quickly 2 後編 18-279 月見里(12-676) 洒涙雨 2 ―中編― 18-292 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 14 恋、はじまる 18-303 くまのこ(17-598) もし最強無敵の電撃姫が初めからデレていたら 18-312 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 15 恋、はじまる 18-325 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 6 第6話『ウソとホント』 18-331 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 6 第6話『ウソとホント』 18-343 くまのこ(17-598) とある不幸な都市伝説 8 3日目 後編 18-350 月見里(12-676) 洒涙雨 3 ―後編― 18-367 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 16 恋、はじまる 18-389 くまのこ(17-598) もし32万8571分の1の天才が初めからデレていたら 18-397 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 7 第7話『壮絶なるビンゴ大戦』 18-402 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 7 第7話『壮絶なるビンゴ大戦』 18-417 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 17 恋、はじまる 18-431 夢旅人(15-189) とある男女の恋愛生活 6 Always_On_My_Mind 18-441 またーり三世(18-440) 美琴 「黒子聞いて、新しい能力を開発したわ」 18-452 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 8 第8話『壮大なるビンゴ大戦』 18-466 くまのこ(17-598) 酔い上さんは絡み酒 18-475 くまのこ(17-598) 酔い琴さんは泣き上戸 18-483 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 9 第8話『壮大なるビンゴ大戦』 18-494 夢旅人(15-189) とある男女の恋愛生活 7 Always_On_My_Mind 18-510 くまのこ(17-598) とある不幸な都市伝説 9 4日目 上条編 18-519 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ ぴろーとーく 18-529 久志(18-529) 小ネタ 着うた 18-540 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 10 第9話『走れ、上条』 18-554 くまのこ(17-598) 3人のゲテモノメイドと+α ですの 18-562 ぐちゅ玉(1-337) よんでますよ、カミジョーさん。 1 18-569 ぐちゅ玉(1-337) よんでますよ、カミジョーさん。 2 18-586 い~む(16-135) 未来からの来訪者 13 ~5th day まこみことうま~ 18-605 くまのこ(17-598) もし御坂家の御令嬢が初めからデレていたら 18-608 くまのこ(17-598) 小ネタ 上と琴でイチャイチャさせてみた 18-651 琴子(4-448) 小ネタ 上条さんと家庭教師(美琴さん) 18-659 夢旅人(15-189) Just_Married ~私たち結婚しました 18-702 くー(18-699) どっちも負けず嫌い 1 18-715 月見里(12-676) ふたり 18-739 くー(18-699) どっちも負けず嫌い 2 18-754 アクセ(18-753) 二人の鈍感 18-766 17-491 友達ルート? 1 18-783 蒼(4-816) Presented to you 9 ―beginning・一二月三日②― 18-793 夢旅人(15-189) 愛してると言って ~Say_You_Love_Me 18-817 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 11 最終話『すべての真相』 18-829 琴子(4-448) とある10人のハロウィンパーティ 1 Let s_do_something! 18-842 夢旅人(15-189) その香りは誰がための 18-858 久志(18-529) 小ネタ 上琴ドッキリマル秘報告 18-871 くまのこ(17-598) 集結!御坂DNA だとよォ 18-893 18-892 小ネタ 正夢? 18-933 くー(18-699) どっちも負けず嫌い 3 18-940 mm(18-939) 上琴の勉強会 18-956 くまのこ(17-598) いちゃいちゃって難しい 18-975 O.T.(18-974) この半径30cmの中で Way_to_Answer. ▲
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説 5日目 後編 この世は何が起こるか分からない。 人生の転機とは唐突にやってくるものだ。 とある不幸な少年は、魔道書を記憶しているという少女を助けた事で、科学と魔術の抗争に巻き込まれていく事になった。 最強を求めた少年は、今まで殺してきた人形と瓜二つな少女を助けた事で、学園都市の更なる闇へと堕ちていく事になった。 チンピラだった少年は、たった一人の愛する少女を助けた事で、学園都市を敵に回す事になった。 突然死神のノートを拾う事もあるかもしれない。組織の新薬の実験台にされ、子供になる事もあるだろう。 実家の蔵の地下に、大妖怪とそれを滅する槍が封印されている事だって、十分にありえるのだ。 だから驚くべきことじゃない。 「昨日までそんな素振りを全く見せなかった男から、突然告白される」なんてことは。 たとえそれが意中の相手だったとしても。 その二人が唐突に恋人同士になったとしても、別に驚くことではない。きっとよくあることなのだ。 そんなよくある二人の上条と御坂。 たった今恋人となった二人は、同じベンチに座っている。ただそこには、大分距離がある。 まぁ確かに告白直後だ。気まずいのも無理はないだろう。 そんな二人はそれぞれ思いにふけているようだ。これからのことを考えているのだろう。 (どどどどうしよう!!! すごくうれしいけどアイツの顔まともに見れない~~~!!! こんな時はどうすればいいんだっけ!? えっとえっとたしか、相手の顔に「人」って書いてカボチャを三回飲み込めばいいんだっけ!? あ~も~!! 全然頭が回らない~~~!!!) みさかは こんらんしている! わけも わからず じぶんを こうげきした! 少々テンパリすぎな感はあるが、御坂の反応は分かる。 問題は上条だ。 「ついに ねんがんのカノジョを てにいれたぞ!」なはずなのに、何だか浮かない顔をしている。 彼は御坂とは全く違う事を思っているようだ。 彼氏彼女の事情は違うのかもしれない。 (恋人役はこれでいいとしても、これからどうするかだな…… とりあえずその場しのぎにはなるが、根本的な解決にはなっちゃいねぇ。 かと言って、動きようにも情報が少なすぎる。 手がかりといえば、精神系の魔術師か能力者。一度に大勢を操れる。……それくらいか。 しかも目的が全く読めないのも厄介だよな。 女の子を使って俺に告白させて何のつもりだ?俺の純情弄ぶやん? せめて魔術に詳しい味方がいればいいんだが…… あ~くそ! 土御門がやられてなきゃな~!!) 君は一体何を言うとるのかね。 彼は架空の敵を勝手に作り、勝手にピンチに陥っている。 つーか純情弄んでんのはお前なんだが。 「おーいたいた! 久しぶりなのよ上条当麻! ……ってそれほどでもないか」 迷走中の上条のもとに、ある男が話しかけてきた。 その光沢のあるクワガタのような特徴的な髪型の男は、 「た、建宮!? 何で学園都市【ここ】に!?」 「まぁちょっと野暮用なのよな。」 そう言いながら、建宮は御坂の方をチラリと見る。 (んー…この子が上条当麻のことを好きなのは間違いなさそうなのよ。 けどこれくらいなら、女教皇様と五和にもまだまだチャンスがあると見た!! お嬢ちゃんには悪いが、恋ってのは奪ってナンボの世界なのよ!!) なにやら燃えている建宮。 お願いだから、これ以上事態をややこしくしないでくれないか。 「野暮用って?」 「あー…実はアレなのよ。みんなしてお前さんに会いに来たんで、俺はその付き添いみたいなものなのよ。」 みんな、というワードに上条は嫌な予感がした。 「誰が来てんの……?」 「女教皇様に五和。それにオルソラ嬢、シェリー、アニェーゼ、レッサー。あとはステイルなのよ。」 言いながら建宮はケータイを取り出した。 「もしもしステイルか? ああ、上条当麻を発見したのよ。 そうそう……えっ?違う違う。 その猫地蔵の呪いにかかったって人は別人なのよ。 うんそう、似てるだけ。」 どんな会話してんだよ、と思いながらも、上条は益々嫌な予感を募らせる。 (まさか、神裂達まで!? 学園都市の中だけの問題じゃねぇのか!?) 事態はさらに深刻化する。主に上条の頭の中で。 すると反対側から、ちょいちょいと右腕の袖を引っ張られた。 「どうかしたのか?美琴。」 「ぅえっ!? あ、い、いや、その…誰なのかなって……」 やはりまだ会話がぎこちない。 ただし、ぎこちないのは御坂側だけで、告白した張本人は実にあっけらかんとしている。 「そう言えば美琴は会ったことなかったな。 アイツは建宮斎字っつって、まぁ、あっち側の人間だ。」 「…あっちって……魔術師ってこと…?」 「まぁな。けど仲間だから大丈夫。いいヤツだから安心しろって。」 「そう……」 御坂は魔術師に対して、あまりいいイメージを持っていない。 初めて触れた魔術が、「ガラスの靴」や「森の住人」だったのだから無理もないが。 これがもし「竜破斬【ドラグ・スレイブ】」や「光の白刃」だったら、また違った印象を受けたかもしれない。 いや、どちらにせよ、いい印象は受けないか。 「もうすぐ来るみたいなのよ。」 電話をし終わった建宮は、自販機に寄りかかりながら話しかけた。 (さて、みんなが来る前に、ある程度情報を引き出しとくとするか。) 尋問開始。 「まず聞きたいんだが、二人は付き合ってるのか?」 その質問に御坂はビクンと跳ね上がるが、上条は冷静に答えた。 「……何でそんなこと聞くんだ?」 「ただの興味……と言いたいが、こっちにも事情があるのよ。」 事情。その言葉に、上条は「やはりか」と先程の嫌な予感を確信へと変える。 「待て建宮。 そのことは全員揃ってから説明しよう。 ステイルも来てるんだろ? アイツにも協力してもらいたい。」 「………?」 上条の目は真剣だった。 建宮はこの目を何度か見ている。 法の書を巡る事件の時、アドリア海の女王に乗り込む時、そして後方のアックアと戦った時。 上条はいつも、何か大切なものを守る時にこの目をしていたのだ。 冷やかしに来た建宮だったが、その目を見て何かを感じ取り、仲間達の到着を黙って待つことにした。 (まさか、学園都市で何か起きているのか? だとしたらこんなことしている場合じゃないのよ……) こうしてまた、めんどくさい誤解が広がっていくのであった。 しばらくしてステイルらと合流した上条と御坂は、今はそれぞれ男子チームと女子チームに別れている。 「精神操作か……随分と厄介だね。」 「本当に右手は反応したのよな?」 ステイルと建宮は、神裂達が操られていないことを知っている。 上条の教室で起こった事だけを聞けば、神裂達同様、御坂への嫉妬心から起こした行動であろうことは予測できる。 しかし、それでは絹旗に幻想殺しが発動したことが説明できない。 やはり何か事件がおきている事は間違いなさそうだ。 全く、食蜂さんが余計なことをしなければ…… 「ああ、間違いねぇ。 しかもその絹旗って子とはほとんど面識が無い。ほぼ無関係だ。 つまり敵は、俺の近くにいる人間なら、誰彼構わず平気で巻き込むようなクソ野郎だってことだ。」 「お前さんがハワイで戦り合った魔術師はどうなのよ? 確かグレムリンの中にそういう魔術を使うヤツがいたはずよな。」 「いや、サローニャじゃないと思う。 アイツは大勢の人間を一度に操れないし、そもそもこんなことできる状態じゃないからな。 ステイルは何か心当たり無いか?」 「その手の魔術師なら何人か知っているが……学園都市に来ているとは考えにくいね。 それ以前に、土御門すら簡単に操るヤツが動いているなら、必要悪の教会に何の情報も入ってこないのはおかしい。 となると犯人は………」 「能力者…か?」 「その可能性が高いと言っているだけさ。 犯人が意図的に情報を遮断しているかもしれないから、断定はできないけどね。」 「結局は何も分からないってことか……」 「とりあえず僕は、吸血殺しの子に、魔力の痕跡が無いか調べてくるよ。 魔術を使ったのなら何か分かるはずだ。 ただ、もしこれが能力によるものなら僕にはお手上げだけどね。」 「なら俺は、怪しそうな能力者を洗い出しておくのよ。 心配しなさんな。隠密行動は天草式の十八番なのよ。」 「じゃあ俺は、引き続き美琴と恋人のフリをしながら、敵の出方をうかがう。 二人とも、くれぐれも気をつけてくれよ!」 「……その前に、本当にあの子とは恋人の『フリ』なのよな?」 「ああ、美琴もそれを承諾してくれてる。」 「それを聞いて安心したのよ。(後で女教皇様と五和に言ってやろう。)」 上条はそこで二人と別れた。 (それにしても、あの神裂まで洗脳するとは……敵がそれだけ強力ってことか。 もしこの状態が、魔術や能力なんかじゃなかったら、上条さんはどれだけ幸せ者か…… なんて、あるわけ無いよな……ははは…不幸だ……) 確かに、お前の鈍感さは不幸だよ。 現実を幻想と勘違いし、その幻想すらもぶち殺すあたり、流石はフラグメイカーにしてフラグブレイカーである。 一方、男子チームとはまた違った緊張感に包まれている女子チーム。 とても気まずい。 御坂は、五和とレッサーは知っているが、他のメンバーは知らない。 というか、レッサーが上条と知り合いだったというのは驚きだが、今はまぁいい。 6人中3人の乳がデカイのもどうかと思うが、それもまぁいい。 御坂が上条から頼まれたことは、「この女性陣に事情を説明してくれ」というものだった。 上条の考えは、 「今、神裂達が抱えている感情は、何者かによる洗脳で植え付けられたモノ。 だからまずはそれを説明して、それでもダメなら『御坂が上条の彼女だ』と暴露して、諦めてもらう。」 というものなのだが、洗脳云々を知らない御坂にとって事情を説明するということは、 「上条の友人達に、『自分が上条の彼女です』と自ら自己紹介する」 ということなのだ。 最終的にやることは変わらないのだが、モチベーションが大きく違う。 (でででできるわけ無いでしょうがっ!!! どんな羞恥プレイなのよっ!!!) まぁ、御坂の性格なら当然こうなるだろう。 いつまでもマゴマゴモゴモゴしている御坂に痺れを切らしたのか、この中で一番男らしいシェリーが、 誰もが聞きにくかったことを直球で聞いてきた。 「………なぁ、お前は上条当麻のコレか?」 そう言いながら小指を突き立てるシェリー。 それを見て御坂は、真っ赤になりながらも小さく頷いた。 「ぁ…あの……その…えと………はい………」 それを聞き、大なり小なりショックを受ける乙女達。 (何だ…やっぱりか……来て損したわね………) (そりゃそうですよね……彼になら、彼女の一人くらいいてもおかしくねぇってな話ですよ………) (や、やはり祝福するべきですよね……しかし、何故こうも胸が痛むのでしょう…?) (諦める…べき……なので…ございましょうか………) (あー!! 私の完璧な「人類イギリスに補完計画」がぁ~~~!! ……ん? それなら彼女さんも一緒に働いてもらえばいいんじゃないですか? すごい閃き!! レッサー天才!!) 一部さほどショックを受けていない人物もいるが、それはまぁ特例だ。 特に、「上条のためなら死んでも構わない」と本気で思っている五和などは、 「あ……は……ははは…は………」 完全に放心状態だ。そして危険な状態でもある。 アックア戦を思い出してもらえばお分かりになると思うが、彼女はヤンデレになれる才能を秘めている。 が、別になって欲しい訳ではない。 彼女には、殺した両親を埋めるために巨大な穴を掘ってほしいわけでも、 腹を掻っ捌いて、妊娠しているかどうか確認してほしいわけでもないのだ。 と、そんな状況の中、男子チームから一人になった上条が、ノコノコ歩いて来やがった。 コイツのせいでえらい騒ぎである。 上条は神裂達の顔を一通り見るが、やはり様子がおかしい。 (やっぱりダメだったか……) ダメなのはお前の頭なのだが。 上条は絹旗の例もあるため、一人一人の頭を撫でてみた。 しかし、彼女たちが顔を赤くするばかりで、幻想殺しは一向に反応しない。 今回も姫神たちの時のように不発したらしい。 上条は溜息をついた後、御坂の肩に手を回しこう言った。 「みんな、もう聞いたとは思うが、俺はこの美琴と付き合っているんだ。 だからみんなの気持ちには応えられない。本当にゴメンな。」 あの鈍感だった上条からは、想像もつかないような衝撃の言葉が、その本人の口から出てきた。 御坂から聞いたのとは訳が違う。 想い人である上条本人から聞くというのは、先程とは比べ物にならないくらいショックなのだ。 アニェーゼはうっすら涙を浮かべ、五和は走り去ってしまった。 奇しくも教室で起こったことを、そのまま再現する形になったのだ。 これが全て勘違いによるものなのだから、彼女たちも浮かばれない。 「ま、まぁそういうことらしいので、今日はもうお開きってことでいいんじゃないですか!?」 重い沈黙に耐えかねて、レッサーがこの場を何とかしようとする。 ここで「人類イギリスに補完計画」がどうとか言わないあたり、流石のレッサーも空気を読んだようだ。 レッサーの言葉を聞き、一人、また一人と彼女達はこの場を離れていく。 最後に神裂が、 「幸せに……なってくださいね………」 と言っていたのが、妙に印象的だった。 取り残された二人はしばらく沈黙し、再び思いにふけていた。 (今のってやっぱり、みんなコイツのことが好きだったってことよね……… あたしなんかで本当にいいのかな……ううん! コイツが選んでくれたんだもんね! 自信持たなきゃ!! か、か、彼女として!!!) 一方、上条も思うところがあるようだ。 (教室のことといい、さっきといい……明らかに俺を狙ってるよな…… となると美琴を巻き込むのはやっぱ危険か? いやでも、美琴が一緒にいないと「恋人がいる」って言い訳はできないし………) 悩んだ上条は、改めて御坂に決定権を委ねることにした。 断られたらその時はその時だ。 「美琴!」 「ひゃ、ひゃいっ!!?」 突然呼ばれて御坂は飛び上がった。 「こっちから頼んでおいてなんなんだけどさ……その、本当にいいのか? 俺の恋人(役)なんて……色々危険なこともあるしさ。」 危険。その言葉に御坂はピクッとする。 この男がいままでどれだけ危険な戦いをしてきたのか御坂は知っている。 自分の命を省みず、どれだけ多くの人を救ってきたのかを知っている。 かくいう御坂だって、その中の一人なのだから。 記憶を失おうが、右腕をぶった切られようが、何度死に掛けても彼は足を止めなかった。 そんな彼だからこそ、多くの女性が心惹かれたのだろう。 「もし美琴が嫌だったらさ、今からでも考え直して―――」 「いや!!!」 それまでのおどおどした態度とは一変し、御坂は自分の気持ちをはっきりと言葉にした。 「考え直せって何よ!! アンタがあたしのこと、ひ、必要って言ったんじゃない!! アンタの性格なんて百も承知なのよっ!! これからだってアンタは危険なことに首を突っ込むんでしょ!? ホントは止めたいけどアンタは止まんないんでしょ!? 分かってんのよそれくらい!! だからあたしが支えてやるっつってんの!! そういうところも受け入れてアンタのか、か、彼女になるって言ってんのよ!!! それくらい分かりなさいよこの馬鹿!!」 息を切らしながらも御坂は自分の気持ちを曝け出した。 それは全く嘘偽りの無い、純粋な彼女の想いである。 素直になれない彼女がここまで言うには、相当の勇気が必要だっただろう。 それを聞いた上条は、 (美琴……そこまで俺を心配してくれてたのか………俺はいい友達を持ったなぁ……) などと、もうお前マジで死んだ方がいいんじゃないかと言いたくなるような感想を述べているが、 上条自身も気付いていない。 赤くなりながらも自分への想いをぶちまけた御坂を見て、 自分の頬もほんのり赤みを帯びていることに、彼は気付いていない――― 「よ、よし! じゃあ何の問題も無いってことで、気を取り直してこれからちょっと街をぶらつくか!! (ステイル達の連絡はまだだ。 俺達にできるのはカップルのフリして敵の出方を待つことだけだもんな。)」 「そ、それって、デ、デートって…こと?」 「そりゃそうだろ。恋人(役)なんだから、デートしない方が不自然だろ?」 「そ、そうよね!! ここ、恋人だもんね!!」 こうして二人は公園を後にした。 この何ともいえない、アンジャッシュのコント状態はまだまだ続くようだ。 「あっ、ポケットに入れっぱなしだったけど……いちごおでん食べるか?」 「…いや、いらない………」 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/side by side ― ホワイトデー ― 同日12時30分、上条宅 上条は美琴のありがたいお説教をあれからずっとリビングで受けていた。 上条の言い分によると『土御門から女の子にはサプライズが良い、と聞きましたのでサプライズな事件でも起こせばいいのかなと思いまして…』らしい。 だがもちろん彼の友人、土御門元春が言いたかったであろうサプライズは違う。 彼の言いたかったサプライズとは、予告もしていないのに突然女の子にプレゼントなどを贈ったり、その子にとって嬉しいことを計画したりすることである。 それを上条は履き違えて、サプライズなら何でも喜ぶ、つまりサプライズな事件という結論に彼の頭の中で至ってしまったのだった。 そして冗談が全く冗談に聞こえないシチュエーション。 美琴の怒りは最高潮にまで達していた。 「ったく、確かにアンタが私を喜ばせようとしてくれたのは嬉しいわよ?…けどね、もっと時と場合とシチュエーションを考えなさい!!アンタの場合、アレは全く冗談に聞こえないのよ!!」 「…………」 「わかったら返事をしなさい!!」 「は、はい!!本当に、申し訳ありませんでした!!」 上条は始め背筋をピンと伸ばし、これ以上ないくらいまで地に這いつくばって土下座をした。 「はぁ…もう気が済んだし、アンタも懲りたようだからこれ以上はもう何も言わないけど…」 それ聞いた上条は安堵し、緊張をとく。 ―――が、しかし 「ただし!」 彼女の再びの張りのある声により、緩みかけた緊張の糸がまた張り直される。 「もし万が一冗談で私を心配させるようなことがあれば…わかってるわよね?」 そう言って美琴は笑みを浮かべつつ(目は全く笑っていない)、左右両ポケットの中からありったけのコインを取り出した。 その数、およそ十枚程。 これは暗に、『もしあればこれら全部ぶっ放す』とまで言っている。 上条はいくら以前に数回超電磁砲を防いだことはあっても、そんな一気に約十発も撃たれたら防ぐのに右腕が一つでは明らかに足りない。 その先に待ち受けるのは、死あるのみ。 「わ、わかります!えぇわかりますとも!!上条さんの頭はそこまで悪くないのですことよ!?」 「あらそう、ならいいんだけどね。……あぁあと、この件は貸しってことでいいわよね?」 「…………は?」 「貸しでい・い・わ・よ・ね!!」 「も、もちろんですとも!何なりとこの愛玩奴隷上条当麻にお申し付け下さいませ!!」 それを聞いた美琴はピクリと眉を動かす。 そして先程の笑みとはまた違う笑みを浮かべて、 「ほっほーぅ…愛玩奴隷、ね。そういえば大覇星祭の時の罰ゲームも何だかんだでうやむやにされたし、それの謝罪もまだだったわよね?」 「は…?いや、これはその…言葉のあやというか…」 「それじゃ、こうしよっか。今日一日中はアンタは私の言うことを何でも聞く、口答えしない、抵抗しないってことで」 「お、おい!それはいくらなんでも横暴すぎやしませんか!?」 「あら、アンタは私に文句を言える立場だったかしら?愛玩奴隷さん?」 「…………はぃ。あぁ…」 自分で考えて用意した策が裏目にでて、一ヶ月前のある日と似たような展開に上条は思わずいつもの口癖を言いそうになる。 だが、上条は喉まで出かけたその言葉を口にすることはなかった。 何故なら、今自分の目の前には嘘ではあったものの、それでも自分の身を必死に心配して大急ぎで家に駆けつけてくれた"彼女"御坂美琴がいるのだから。 それほどまでに自分の身を安否を案じてくれる人は自分の肉親以外に今までに何人いただろうか。 過去のことは上条自身、記憶がないのでわからない。 しかし彼の父親の話を聞く限り、不幸を撒き散らす人間として蔑まれていた幼少時代は逆に疎まれてたと思う方が妥当だろう。 そして今絡んでいる友人やクラスメートなどの自分に対するぞんざいな扱いを見る限り、そこまでの心配をしてくれるとは到底思えない。 唯一その可能性が有り得る人物は、以前自分の部屋に居候していたシスターとは思えない程の大食らいの銀髪の少女、インデックスくらいだろうか。 無論、これ以外にもいるかもしれないが、少なくとも今直ぐに考えてでてくる人間はこれくらいだ。 そして今目の前にはそのほんの一握りしかいないであろう人物がいる。 今まで散々不幸不幸とぼやいてきたが、こういう人物の存在以上に幸福があるだろうか。 まして、この状況を不幸というのはもってのほかである。 「…………幸せだな」 「はぁ?……アンタ、もしかしてソッチの気でもあるわけ?うわぁ、流石の私でもちょっと引くかも…」 と言いつつ、美琴は既に上条から一歩引いている。 「おいおい!それは違うぞ!これはそう言う意味じゃなくてだな…その…」 「じゃあどういう意味?ちゃんと答えられなかったら問答無用で確定ってことで」 「酷いな!?……えっとだなぁ、これはその……美琴みたいに俺の不幸と真っ直ぐ向き合ってくれて、ここまで俺のことを心配してくれる人がいてくれて幸せだなって思っただけだよ」 「ッ!!」 「断じてソッチの気があるわけじゃないからな!!」 「…………」 上条は言い切ると、珍しく顔を少し赤くして美琴への目線を逸らす。 対して美琴は、かいつまんで言うと『お前がそばにいてくれて幸せだ』という上条のセリフを聞いて上条とは比べものにならない程顔を赤く染めていた。 彼女は内心よくもそんなセリフを言えたものだ、と呆れている部分もあるものの、そう言ってくれた喜びの方が断然大きい。 勿論、面と向かって言われたので恥ずかしいという気持ちもあったが、今の彼女にとってそれは些細なものでしかなかった。 今はただ、その圧倒的な喜びを、そして嬉しさを上条に伝えたい。 そう美琴が思っていたら、彼女の体は口よりも早く自然と動いていた。 愛すべき"彼氏"上条当麻の元へ。 そして美琴は今まで一番強く、彼を抱きしめた。 「うおっ!ちょ、ちょっと、美琴さん?一体どうしたんでせうか?」 「………ばか」 「??…上条さんは今の状況が全く理解できないのですが…?」 上条はそう言うが、実はなんとなくは掴めており、その言葉は照れ隠しの役割もあった。 そしてその内容はここ一ヶ月間ずっと彼女と一緒にいたことによってわかったことなのだが、とにかく美琴はこういうことに関してはとことん不器用なのだ。 普段の彼女を見ている周りの者達は、彼女をなんでも器用にこなして、頭もよく、誰とでも分け隔てなく接し、明るく素直な人と思うだろうか。 しかし、大部分は確かにそうであるのだが、こと恋愛沙汰、それも上条に対してはその限りではない。 これに関してはとことん美琴は素直ではなく、不器用なのである。 だから口では思ってもないことを言うことが多々見受けられるのだが、本当に嬉しい、感動している時は決まって何を口走るかわからない口で表現はせずに体全体で表現する。 だから、上条には彼女の何かしらの強い感情を抱いていることを察することはでき、尚且つそれが何の感情であるかはなんとなくわかっていた。 (ホントにこいつはこういうことは不器用だよな。何かを伝えたいなら口ではっきり言えばいいのに…。…まぁそれがこいつの可愛いところでもあるんだけどな) 上条もそれ以上は何も言わず、黙って美琴の背に優しく手をまわす。 それを受けて、美琴は更に抱きしめる力を強くし長い間ずっとそのままの状態で時を過ごした。 同日13時30分 「腹減った…やっと飯にありつける…」 「こんな時間になったそもそもの原因はアンタにあると思うんだけど?」 「わかってますよ…わかってますからそれ以上あの件には触れないでください」 あのままかなりの時間を過ごした二人は、昼ご飯時をとうに過ぎた今、ようやく昼ご飯を食べようとしていた。 ご飯自体は上条が美琴に電話したすぐ後には作り終えて、あとは食べるだけの状態だったのだが、時間が経ちすぎてすっかり冷めてしまっていた。 それらを温めなおすのに多少の時間を要したものの、今やっと準備をし終えて、ご飯を食べようとしている。 「ま、まぁこんだけの料理を作って待ってたってとこだけは褒めてあげてもいいけど…?」 「あぁはいはい、わかったからもう食おうぜ。せっかく温めなおしたのにまた冷めちまう。……あと、さっきも思ったけど伝えたいことあるならちゃんと口で言った方がいいぞ?毎回毎回あれでもわからなくはないけど、いくら上条さんでも限界があるからな」 「よ、余計なお世話よ!大体、アンタは…」 「いただきまーす」 「……って彼女無視して先に食べてんじゃないわよ!!ったく、いただきます……ん、意外と美味しい」 別に美琴は上条が料理をできないとは思っていなかった。 一人暮らしで自炊しているのだから、ある程度はできるのだろうとは思っていた。 だが実際食べてみたらその予想を上回る味。 常盤台女子寮の食堂の味と大差ないと思える程に。 「そうなのか?お嬢様の美琴さんに美味しいと言ってもらえるとは、上条さんの料理スキルもすてたもんじゃないな」 上条とて、伊達に以前自分の部屋に居候していた大食漢の銀髪シスターを賄ってはいない。 食べる量には腹立たしい面もあったが、それでも美味しいと言ってくれたことが思いの外嬉しく、それ以来もっと美味しいと言われたくてこっそり腕を磨いてきた。 そして、隣に住む土御門の義妹の舞夏の教えもあり、それなりの腕はあると自負している。 それでもレベルの高い料理を食べ慣れているであろうお嬢様の美琴を満足させるレベルかどうかなのかは心配はしていたのだが… 「いやあ、不味いって言われるの覚悟での決行だったが、よかったよかった」 「べ、別に、当麻が作ってくれた料理なんだから例え不味くても私は食べるわよ……これも私が喜ぶと考えてやってくれたことなんでしょう?」 「ん?まあそうだけど…」 「だったら私は満足よ…ありがとね」 そう言って美琴は少し照れながらも、しっかり上条の目を見て微笑んだ。 その笑顔はこの時の上条曰わく、どこかの物語にでてくる天使を思わせるような笑顔、だったらしい。 そしてその天使のような笑顔を目の当たりにした上条は、いつもの平常心でいられるわけもなく、少したじろぐ。 この二人はまだ付き合い始めてから一ヶ月経っている。 こういう経験が初めての彼らには一ヶ月"も"かもしれないが、世間的にはやはり"まだ"一ヶ月。 付き合い始め特有の初々しさは抜けきらない。 長い沈黙が続いて、そのままの状態で昼ご飯を済ませた二人は上条は後片付けをして、美琴は上の空の状態でテレビを見ていた。 はじめは美琴も片付けをすると自ら言っていたが、『お前は客なんだからテレビでも見てろ』と断られた次第だ。 (うぅ…なんかさっきから会話がないから気まずい…。それにテレビって普段こんな時間になんて見ないから、面白いのなんて知らないし…) 美琴は初めての上条の部屋ということで軽い緊張状態にあったが、その他に先ほどから会話が続いていないことを気にしていた。 その原因は上条が美琴の笑顔を見てから部屋に二人きりということを急に意識にし始めて、彼女の顔をまともに見れなくなったのが原因なのだが、それを美琴が知る由もない。 今はとにかく水が流れる音や食器を洗っているためか、食器同士がぶつかり合うカチャカチャという音がやたら耳につく。 「ね、ねぇ……この後って何か予定あるの?」 そしてこの状況を打破すべく、美琴が上条に問いかける。 「んー、そういや飯とか菓子とかのことばっかり気にしててこの後のことは特に考えてなかったなぁ…」 「あっそうだ、お菓子ってどうなったの?」 「おっと、そうだったな、自分で言っといてすっかり忘れてた。ちょっと待ってろ、もう直ぐ片付け終わるから」 上条が言ったとおり、それから間もなくして片付けが終わったらしく、水の音や食器同士がぶつかり合うカチャカチャという音はなくなった。 そして、小さめのケーキを入れるような正方形に近い箱を持って上条が台所からガラステーブルの前にちょこんと座っている美琴の元へ駆け寄る。 「ほい。味は……まぁ美琴が作ったケーキには劣るかもしれないけど、俺なりに頑張って作ったからそれで許してくれ」 「……さっきも言ったでしょ。私は当麻が私のために作ったものなら何だって食べるって。私はこれを作ってくれただけで十分嬉しいから」 「そっか」 「んと……開けて、いいのかな?」 「そりゃお前にあげたものなんだからいいに決まってるだろ?」 それを聞いて美琴は恐る恐る上条が渡した箱を開けた。 中身は香ばしい香りが際立っているアップルパイだ。 「一応言っておくけど、何でアップルパイなのかってのは聞かないでくれ。材料があったのと、俺のあまりないお菓子スキルで美琴のリクエストに応えられそうなものがそれぐらいしかなくてな」 「うん……ここで少し食べるからフォーク貸して」 「へ?飯食ったばっかだろ?もう少し後の方が…」 「デザートは別腹ってよく言うでしょ?それと同じよ。私は今食べたいの」 「ふーん。相変わらず女の子ってよくわかんねーな」 それだけ言って上条はまた台所へ戻り、美琴が頼んだものを取りに行った。 その間美琴はもらったパイの香りを堪能していた。 形は少し歪なところもあるが、それは手作りということで十分許せる範囲内だ。 そして何より上条が言うよりもずっと美味しそうではある。 「ほらよ」 「あ、ありがと」 「自分で作ったものだし、どうせだから俺が切り分けてやるよ。それに一応美琴もお嬢様だもんな?」 「一応は余計よ!」 「へいへい」 美琴の文句を軽く流しつつも、上条は隣でパイを切り分けてゆく。 切り分けてゆく際の音や漂ってくるリンゴの香りが、美琴曰わく何とも言えなかった。 そして四等分されたパイを上条があらかじめ用意していた皿にのせ、美琴の前のテーブルに置き、 「……では美琴お嬢様、どうぞお召し上がりください」 「アンタが言うと激しく馬鹿にされてるようにしか聞こえないんだけど、それは気のせいかしら?」 「うん、間違いなく気のせいだな。ほれ、さっさと食え?」 「…言われなくても食べるわよ」 美琴は皿に添えられていた、上品さのかけらもないフォークに手を伸ばし、パイを口に含んだ。 数回の咀嚼の後、美琴はそれを飲み込み、少しキョトンとした表情で隣に座っている上条を見る。 「普通に美味しいわよ?」 「そうなのか?いや、菓子はほとんど初めてだったから自信なくてな」 「当麻も食べる?」 「いや、俺はいいよ」 「当麻も食・べ・る?」 「………はい」 半ば強引に上条の返事をもらう。 上条は昨日に小さめの試作品を作って、それを食べたので味は知っていた。 しかし、彼女にこう言われたら断れない。 「じゃ、じゃあ……はい、あーん」 「は…?ってええぇ!?」 美琴がやろうとしているのは、恋人同士なら最早定番とも言える"アレ"である。 少女趣味な美琴としては、恋人と一度はやってみたいことランキングの上位に入る。 実際、今まででやろうと試みたことは何度かあったが、それは上条に『人目が気になるし、恥ずかしい』と手厚く拒否されてきた。 恥ずかしいのは彼女も同じであるが、そこはやはり乙女。 やりたいのだから、そんなことはなんとか気にしない方向でいた。 「な、何してんのよ。ほら、あーん」 「ちょ、ちょっと待て美琴。いや、自分で食べるよ」 この流れはいつも通り。 だが今までと今日では状況が全く違い、部屋に二人きりなので人目を気にする必要性は皆無。 そして何より、今日の美琴には上条に対して絶対的な権利がある。 「今日は私の言うこと、やることに当麻の拒否権はない!!……何か異議があれば受け付けるわよ?」 「………申し訳ございません」 「わかればいいのよ。じゃあ、あーん」 「………あーん」 上条は躊躇いながらもゆっくりと美琴のスプーンの先に刺されているパイを口に含む。 「ムグムグ……まあ私的には美味しいと思いますがね」 「ちゃんと美味しいから心配しないの……ね、ねぇ、あのさ…」 「ん?なんだ?」 「こ、今度は当麻が私にた、食べさせてよ…」 沈黙。 別に上条は美琴が言ったことが聞こえなかったわけではない。 声は小さいながらも、しっかり上条の耳に届いていた。 だが、上条としては食べさせられるのも恥ずかしいが、食べさせるのもそれ同等に恥ずかしい。 だから聞いていないことにしたかった。 「さ、さーてコーヒーでも淹れてくるがはぁ!!」 美琴は立ち上がり、台所に向かおうとする上条のシャツの後ろの襟を思いっ切り引っ張る。 それにより上条は後頭部が美琴の足元の床にたたきつけられるが、美琴にはそのあたりの配慮は一切みられない。 「ごっ、がぁ!!」 「何回も言わせないの。今日、アンタは、私の言うことには絶対服従なの。というか、これはアンタが言い始めたことでしょう?」 「ぐ…ぐるじい……」 「だから、アンタには私の願いを聞く義務があるの。わかった?」 コクコクと上条は自分のシャツで首を絞められつつも、精一杯の力で頷く。 それを見た美琴はようやく上条のシャツから手を離し、彼を解放する。 「ぶはぁ!はぁはぁ…し、死ぬかと思った」 「こ、殺すわけないでしょう?……私にはと、当麻が必要不可欠なんだから」 いやあんな状況だったのに今デレられても困ります、とほんのり頬を赤に染めた美琴を横目に上条は心の中でそう思ったが、口には出さなかった。 もし口に出したら、その結果は目に見えている。 「はぁはぁ……んで、食べさせりゃいいんだよな?」 「う、うん…」 「んじゃやってやるよ。………ほら、あーん」 そう言って上条は一口サイズにされたパイをフォークに刺して美琴に差し出す。 美琴にとって心の底から待ちに焦がれていたシーンの一つがようやく現実で訪れたのだ。 つまり大好きな彼、上条からあーんをされることである。 今まで夢や想像(妄想)などでは嫌という程繰り返し、直前でも頭の中でデモンストレーションとしてやっており、準備に抜かりはない。 だがいざされるとなると、極度の緊張と羞恥で頭が動かず、差し出されたパイにかぶりつくことができなかった。 「……?どした?ほれ、あーん」 もしかしたら位置が遠かったかと勘違いした上条がフォークをさらに美琴に近づける。 パイと美琴の口の距離は数センチ。 美琴がほんの少し頭を動かせばかぶりつくことができる位置にパイはある。 それでも今までの妄想やデモンストレーションの甲斐なく、最早美琴の頭の中は真っ白で、動ける気がしなかった。 (ど、どどど、どうしよう!!は、早く食べないと当麻のことだからフォーク下げられちゃう!!で、でもか、体が動かないぃぃ…!!!) 美琴は全く口を開こうとせず、視線こそパイに向けられているが、端から見ると彼女はそんな状態の人形なのかと思える程固まっている。 (こいつ、自分から食べさせろって言ったくせに……ってあれ?食べさせるってんだからこれでいいんだよな…?でもこいつ全く動かねーし…あれぇ?) 上条は固まっている美琴を見て、少し疑問を抱く。 果たして彼女が求める"食べさせる"形はこれでよいものかと。 美琴はこの方法で自分に食べさせてきたから恐らく間違いない。 とは思っているが、彼女の不動の様子を見れば見るほど、固まっている時間が長ければ長いほど違う様に思えてくる。 (あれぇ?…でもこれ以外の方法つったら…) 無論、実際はこれで合っている。 美琴はやり方が違うから動かないのではなく、極度の緊張と羞恥で動かないだけなのだから。 (まさか……アレを…?いやいやいくらなんでもそれは酷すぎる妄想だぜ上条さんよぉ…。…でもじゃあなんでこいつは動かないんだ?……まさか、本当に…?うぅ…) しかし上条は全く動かない理由を勘違いをして、別の方法を模索し始める。 そして上条の中でこれ以外の"食べさせる"方法の検索結果は一件のみ。 普段なら馬鹿馬鹿しいと一蹴して終わりだ。 でも今日の彼は美琴に絶対服従、拒否権はない。 (あぁもう仕方ねーなぁ) 上条は恥ずかしながらも、脳内の検索で得られた結果を実行することにした。 (あっ!やっぱり下げられちゃった……ってあれ?なんで当麻がそれを食べてるの?) 上条に動きがあって、ようやく美琴が正気に戻った。 しかし彼女の目から見れば彼の動きがどうもおかしい。 パイを下げたまではわかるが、それを皿におかずに自分で食べた。 しかも妙なことに、一気に食べるのではなく、半分かじり、くわえるような形で食べている。 それに疑問を抱くがさらに上条に動きがあった。 少し顔を赤くした彼は美琴目を見て、急に腕を彼女の首に巻きつけ美琴を自分自身に引き寄せる。 (へ…?ちょ、何…ッ!!) そして突然、美琴の口を何かが覆う。 そしてさらにその後、美琴の口の中に先ほどの上条手製のアップルパイの味が口いっぱいに広がった。 その何をされたかを一部始終見ていた彼女は、もちろん何をされたかはわかっている。 だが少し理解し難いものでもあった。 それはパイの味が口の中に広がると同時に、上条からの熱も同時に伝わってくる。 美琴は一瞬その熱と味に戸惑いつつも、熱の方はすぐに離れていき、口の中に残された味の原因となるものを咀嚼して、飲み込むと、 「これで満足か?」 「な、ななな、なんてことしてんのよ!!アンタは!!」 「はぁ?食べさせろって言うからお前と同じ方法でやったら、お前全く動かねーし、やり方が違うのかって思ったからしたんだけど……違うのか?」 「違うわよ!最初ので合ってたわよ!!」 「……じゃあなんで動かなかったんだ?」 「ぅ……そ、それは…」 「はぁ……まぁ、ちゃんと"食べさせた"んだからもうこれでいいだろ?」 上条はそう言って、今度こそコーヒーを淹れてくる、と立ち上がろうとした。 「待って」 が、それをまた美琴が制止する。 「なんだ?まだ何かあるのか?」 「………………かい」 「はい?」 「………さっきのは不意打ちすぎたから、もう一回」 「………えーっと、それはさっきのですか?」 こくっと美琴は可愛らしく頷く。 「………さっきのは場の雰囲気と勢いでやったからこそですので、もう一回ってのは流石に…」 「………ダメなの?」 少し熱に浮かされたような潤んだ目で上目遣いをして上条を見る。 それはいつにも増して可愛らしさが倍増しており、いつもなら考えられないような色っぽさもだしていた。 いつもの上目遣いでもすでにアウトなのに、これに耐えられる上条だろうか。 無論、上条がこれをされた瞬間、彼の脳内会議ではある答えが即決ではじき出された。 「………そんな目で頼まれたら断れませんよ」 そう言って上条は仕方ないと言うような感じで、皿に置かれたフォークを手にとり、取り分けられたパイを一口サイズより少し小さめに切る。 そして先ほどと同様に、パイを半分かじるような形でくわえ、 再度、口移しをした。 先ほどの口移しでは上条は美琴からすぐに離れていった。 上条もパイを美琴に移すと、今回も同様にすぐに離れようとした。 しかし、美琴が今回はそれを許さない。 美琴は上条の体に手をまわし、強く抱きしめ、離れようとするのを阻止する。 そして移された一つの"味"は小さめにカットされていたため、数回の咀嚼ですぐに飲み込む。 そこで次に、今度はまた違う"味"を堪能する。 美琴はただひたすらに"味"を求める。 ただ、その"味"が欲しくて。 ただ、彼を感じていたくて。 「……とう、まぁ……すき…」 「………美琴」 今彼らは上条の部屋で二人きり。 普段彼らが気にする人目や邪魔をする者は一切ない。 だから、美琴は普段できない程、彼に近づきたかった 普段できない程、彼に甘えたかった。 その後、彼らは長い間時を過ごした。 今の彼らの距離は零。 二人の仲を邪魔するものは何もない。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/side by side
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全国一斉上琴テスト はーい! 用紙は後ろの席の人に回してくださいねー!まだ表側を捲っちゃダメですよー。テスト開始はチャイムが鳴ったらですからね。えー、今回のテストは、直接成績に響くことはありません。あくまでも 「上琴」 がどこまで世に浸透しているか、その調査のためなのです。ですが、あまりに点数が悪かった人には補習が待ってますので注意してくださいね。はいはい、ブーブー言わない。それではチャイムも鳴ったところで、テスト開始!なのです。Ⅰ 基本Ⅰ‐① 上琴とはなんですか? (5点)佐天ちゃんの回答 「二人がいちゃいちゃしてることですね!」はい、その通りですね。海原ちゃんの回答 「御坂美琴さんと上条当麻さんによる…ゴフッ! カップリングの名称ですね。 二次創作の世界でも人気のカップ…ガハッ! リングであり、 とりわけ、溝口ケージ氏の『いちゃいちゃレールガン』…グバッ! シリーズや、 七積ろんち氏の…ブフォッ! 『御坂美琴の失恋』などが有名です。…ボグファ!!!」ステマ込みの完璧な回答…なのですが、血を吐くほど辛いのなら無回答でもよかったのですよ?初春ちゃんの回答 「上イン、通行止め、浜滝、数テレ(木原数多×テレスティーナ)と人気を五分する有名なカプですね。 ちなみに私のオススメは土上なんですが、最近は上一もアリかなって思ってます。 (ただし上条さんはヘタレ攻め限定)」腐女子【ホモ好き】は帰りやがれなのです……いやちょっと待って!? 数テレって何ですかその斬新すぎるカップリング!?Ⅰ‐② 上琴病とはなんですか? (5点)ミサカちゃん(Sサイズ)の回答 「あの人とお姉様のカップリングを愛するあまり、パーソナルリアリティに影響が出ること! ってミサカはミサカはニコニコ大百科で得た知識をひけらかしてみる!」はい、正解です。冥土帰し先生の回答 「恋の病というヤツだね? こればっかりは医者でも治せないね?」不治の病、ということですね。木原(数)先生の回答 「要はアレだろ? ガキ共が乳繰り合ってんのを見て喜ぶ変態って意味だよなぁ!!」う、う~ん……まぁ、そうと言えなくも…いやでも……う~ん……… Ⅰ‐③ 上条ちゃんの口癖は? (2点)土御門(元)ちゃんの回答 「その幻想をぶち殺すぜい!」自分の口癖もうつっちゃってますが…まぁ正解ですね。垣根ちゃんの回答 「俺の『幻想殺し』に、その異能は通用しねえ」……ちょっと自分の口癖がうつりすぎちゃってますね。一方通行ちゃんの回答 「『まずはそのふざけた幻想をぶち殺す』『不幸だァァァ』『心に、じゃないですか』『自分のためだろ』 『それでも、お前があいつの友達だってのには変わりないだろ』 『アイツがこれからもずっと悪くあり続けなきゃいけないなんてルールは ――― 』」 (長いので以下割愛)何か怖い! 何でそんなに上条ちゃんに詳しいんですか! どんだけファンなんですか!!Ⅰ‐④ 御坂ちゃんの好きなモノは? (2点)ミサカちゃん(Mサイズ)の回答 「ゲコ太というカエルのキャラクターです、とミサカは回答します」正解です。ちなみに、パチ商品の「どっせいゲコ太郎」には要注意なのですよ。木原(円)ちゃんの回答 「うん、うん。分かってるよ涙子ちゃん。ここは『上条さん』って答えるのが本当の正解なんだよね」確かにそれは模範解答ですが……カンニングはしちゃいけないのですよ………白井ちゃんの回答 「ワタクシ!!!」寝言は寝てから言いましょう。Ⅰ‐⑤ 二人のニヤニヤエピソードを3つ答えてください。 (各2点)雲川(芹)ちゃんの回答 「偽デート、フォークダンス、罰ゲームだけど。 ちなみに、情報源についでは企業秘密だけど」雲川ちゃんはミステリアスなのです。五和ちゃんの回答 「おしぼりを渡しました。お料理も作りました。 い、一緒にレジャーお風呂にも行ったことあるんですから!!」それは、あなたと上条ちゃんのエピソードじゃ……オリアナさんの回答 「街中や川原、それから橋の上でも激しくしちゃったんでしょ? まぁ、他の人の視線があった方が興奮するものね。お姉さんも嫌いじゃないわ」いやいやいや!! あ、あなたが言うと全く違う意味になっちゃいますから!!!/// Ⅱ 歴史Ⅱ‐① 二人が出会ったきっかけを答えてください。 (3点)浜面ちゃんの回答 「大将のことだから、彼女が誰かに襲われてるのを助けたってとこじゃねーの?」ちょっと違いますが…おまけで ○ にしておきましょう。ミサカちゃん(Lサイズ)の回答 「ナンパでもされたんじゃない?」上条ちゃんの性格からして、それはないのですよ。吹寄ちゃんの回答 「上条のいつもの手口ですね!」手口……う~ん、まぁ……Ⅱ‐② 上条ちゃんが入院している時、御坂ちゃんは手作りの何をプレゼントしようとしたでしょう? (3点)姫神ちゃんの回答 「お弁当。手作りと言えば。やっぱりこれ」惜しい! 惜しいですよ~。オルソラちゃんの回答 「その幻想を、お殺しになるのでございます」……それは4問前の回答なのです………マリアンちゃんの回答 「生きてるテーブル」怖えぇよ!!!Ⅱ‐③ 8月31日に二人が食べたのは、2000円の何でしょう? (3点)シスターちゃんの回答 「ジャンボ地獄チャーハンかも!!」それは結局食べてないのですよ。麦野ちゃんの回答 「シャケ弁」…自分が今、食べたいモノではなくてですね……フレンダちゃんの回答 「結局サバ缶が最強って訳よ!」いや…だから………Ⅱ‐④ 大覇星祭の借り物競争で、御坂ちゃんが引いた指令書には何と書かれていたでしょう? (3点)土御門(舞)ちゃんの回答 「第一種目で競技を行った高等学生だぞー」その通りですね。正解なのです。神裂ちゃん(さん?)の回答 「恩…でしょうか」…確かにそれは返さなくちゃいけないモノですが……それが紙に書かれていても困りますよね……オーレイさんの回答 「お金。利子は勿論、十日で一割ね」爽やかな学園行事で、何ちゅうモン貸し借りさせようとしてんですか。Ⅱ‐⑤ 御坂ちゃんがハワイで買った物は、キューピッドアロー社製の何でしょう? (3点)黒夜ちゃんの回答 「あぁ~何だっけ!? ここまで出掛かってんだけど……なんとかリング……イカリングだっけ!?」そんなモン、近所のスーパーで買ってください。ウィリアムさんの回答 「学生の身分でエンゲージリングなど気が早いにも程があるである。 最近の若者は早熟と言われているであるが、そもそも性の乱れが ――― 」 (長いので以下割愛)堅い堅い!! 正論ではありますが正解ではないですよ! あと、エンゲージリングでもないですからね!?ショチトルちゃんの回答 「原典」買えるの!!?Ⅱ‐⑥ 0930事件を、「罰ゲーム」、「ツーショット」、「ゲコ太」の3つのキーワードを使って説明してください。 (5点)雲川(鞠)ちゃんの回答 「罰ゲームの名目で、上条当麻をデートに誘った御坂美琴。 カップル限定のゲコ太ストラップを入手するために、ツーショット写真を撮ることにも成功した。 自分のプライドを傷つけずに目的を達成する、見事な作戦と言えるな」大正解なのです! 雲川ちゃんもお見事ですよー。ヴェントちゃんの回答 「上条当麻殺害の名目で、学園都市に乗り込んだ私。 学園都市を制圧するために、敵意で満たし天罰術式も成功した。 最終的にはローマ正教と学園都市を対立させ第三次世界大戦のきっかけを作った、 見事な作戦と言えるわね」…それ、ガチな方の0930事件じゃないですか………キーワード1つも使ってないし………削板ちゃんの回答 「男は最後の力を振り絞り、気合と根性のツーショット弾を炸裂させ、 見事、怪物ゲコ太郎を粉砕したのだった!! ゲコ太郎 『バ…バカな……この俺が…貴様ごときに……ぐふっ………』 男 『あばよ…あの世で罰ゲームでも受けるんだな……』」………もう、回答が異次元すぎて、どうツッコめばいいかも分からないのですよ……… Ⅲ 創作 次の二人の会話にセリフを入れて、台本形式のSSを完成させてください。 (30点)上条 「おーい美琴! ちょっとこの後 ( A ) ?」美琴 「えっ…いいけど、珍しいわね。アンタが ( B ) なんて」上条 「まぁ、今日は ( C ) だからな! たまにはこんなこともありますよ」美琴 「じゃあ ( D ) してくるから、ちょっと待ってて」上条 「わざわざ ( E ) するのか?」美琴 「 ( F ) ! ( G ) なんだから!!」上条 「…… ( H ) 。 そのかわり ( I ) ?」美琴 「 ( J ) !?」上条 「 ( K ) 」絹旗ちゃんの回答 「A:超映画を観に行きませんか B:B級ホラーに興味持つ C:半額デー D:超制服に着替え E:そのために帰宅 F:そうですよ G:学生割ならさらにお安くなって超お得 H:仕方ないですね。超待っててあげます I:ジュース奢ってくれますか J:何でですか K:高校生は中学生より、割引額が超少ないのです」ちょっといちゃいちゃ度が少ないので、23点ってところですかね。泡浮ちゃんの回答 「A:乗馬でも如何ですか B:お誘いになられる C:とても良いお天気 D:お弁当を用意 E:御坂様が直々にお作り F:勿論ですわ G:折角のおデートですもの。女性は愛する殿方のためなら、どんな事でもしたくなるもの H:御坂様からそんなに想われているなんて、とても光栄ですね I:僕からも一言だけ宜しいですか J:何でしょう K:僕も御坂さんの事を愛しています」若干二人の設定に違和感は残りますが…いちゃいちゃいていたのでいいでしょう! 30点満点なのです!リドヴィアさんの回答 「A:十字教に入れてくれませんか B:科学という異教を捨てる覚悟ができたのですね。素晴らしいことです C:私は目が覚めましたので D:洗礼の準備をいたしましょう E:私などのために聖水を用意してくださるので? F:勿論ですので G:例え元異教徒であっても、哀れな子羊には変わりありません。神は全てにおいて平等ですので H:あぁ…生きていて良かった I:これで私も救われるのですね J:貴方も是非! K:十字教へ!」はい、0点です。 会話も繋がってないし。Ⅳ 考察Ⅳ‐① 二人が今一つうまくいかないのは何故でしょう? (15点)建宮さんの回答 「そりゃもう、上条当麻が鈍すぎるのが悪いのよ! ヤツには少し乙女心ってモンを勉強してほしいのよな!」まさしくその通り!木山先生の回答 「主に彼女の性格に問題があるのではないかな。まずはツン…ツン……ツンドラ?を治すべきだろうね」そうですね。 でもツンドラではないのですよ。フィアンマさんの回答 「全てこの世界が悪いのさ。だから俺様が救ってやるよ」いやいやいや!! また戦争ふっかける気ですか貴方はっ!!!Ⅳ‐② ではどうすれば二人の距離が縮まるか、考えてください。 (15点)テッラさんの回答 「ツンを下位に、デレを上位に」そうですね。御坂ちゃんが素直にならないとですね。木原(病)先生の回答 「諦めればいいのです」よくねーです。結標ちゃんの回答 「彼があと、5~6年若返ればいいと思う」それは結標ちゃんの願望なのです。女性がみんなショタ好きだと思ったら大間違いですよー?……ま、まぁ先生も若い子は嫌いではありませんが……… はい! 終~了~。最後に点数の高かった人の上位グループと、低かった人の下位グループを発表して終わろうと思います。高かった人は鼻高々に、低かった人はよ~く反省してくださいね。よろしいですか? まずはよく頑張りました!ベスト5です。 一位 一方通行 101点 (問Ⅰ‐③の回答が詳しく書かれていたため、特別に+1点) 二位 海原光貴 98点 (テスト中に吐血した量0.4ℓ) 三位 ミサカ10032号 95点 三位 ミサカ10033号 95点 三位 ミサカ10034号 95点 (以下、ミサカ20000号まで全員95点)やっぱり二人に近い人が高得点を出したみたいですね。それと海原ちゃんは、この後ちゃんと病院に行くのですよ?さてさてお次は、残念でした!ワースト5なのです。(下から数えて) 五位 削板軍覇 7点 一位 青髪ピアス 0点 (小萌の補習を受けたいので白紙) 一位 木原円周 0点 (カンニングが発覚したため) 一位 御坂美琴 0点 (一問目から 「ふにゃー」 したため白紙) 一位 上条当麻 0点 (ナチュラルに全問不正解)はい! というわけで、上琴テストはここまでなのですよ。みんなは何点取れましたか? 勿論100点ですよね!それでは! またいつかお会いしましょうなのです~。あ、それと上条ちゃんには大事な話があるので、後で職員室に来るように。 お ま け ヽ、 、 、 、 \ ヽ { ヽ、 \ ヽ ヽ ヽ 、 ‐- 、ヽ \ \ ヽヽ \\ヽ \\ `゙ ミ ヽ \ \ \ \ ヽ \ lヽ、 __>ミ \ ヽ ヽ ヽ ヽ ! ハヽ― = 二 \ \ l } |、 >--== ミ 、`ヽ ヽ、\ ! // / ト、_ ̄>三二 ミ、 ,、ゝ‐- 、 |r-、/ / | 二` ミ- _ ヽ/ - 、 ` ヽ / // }/ ―= ニ ― ニ .〉,ィ‐- 、__,〉 _,, 〉 ///-. 、. _ 優 ‐ '" ヽ三 _ /〈 弋エヽ ヽ /ィェュ}.|//// `゛ ' -. .,, 先 \ミ.二 _彡, -、} /´' } l`ヽ 〉 // .`ヽ す ヽ-=ニ__ '" { ヾ `ヽ ィ ヘ / 〉彡' / | る。 `メ‐ '' ~ ヽ、lイ } _,z孑于テミx、Yr'´ ./ | .ノ//ィ _ヽ! 弋二二二二{/ _ >'" |  ̄ ` ― l\  ̄  ̄  ̄ { > ''" | ̄ " ' ― _ _ | `> -- ‐ '"_ ― ''"´ ツ \ 二 二 二 二 / ン __ _ . . -‐''" ` ‐--.、 デ を. /´ 、 ~ ‐ _ ./\ `‐-、 レ 下 / 、 ヽ \ ヽ \ 〉 } 〉 を 位./ \ ヽ ヽ .〉{ l / ヽ、 上 に、' ∧ ̄ > ''‐._ ./ ヽ―‐''" \― !/ ∧ 位 l ∠二 _ ,.x-‐‐ 、 / ̄ \__\.| / ∧ に / | | } | | }/ / | \ /. \ >. /i /. 丶、 ,... ´ /. / | ハ / ! /. >  ̄ ̄/. /l/ >| / | iハ i / j/ハ /! < ち /. .イ / でうラ'ヘ`} ト ∧ l /厶イ´. ∨ | \ー―一 ょ ー‐ァ. { 厶イ ハ/ `ニ ノ. jノ. 八/. 'でうラヽ/. | \ っ /___ ∧ (|/ 〈 //. ー一'. j/! \ ̄ 何 と /. ハ ∧ \ / { / ̄ ̄\ / } 「 ̄ 言 ∠ 八 . \ / } j\ /. / ∧ハ| 分 っ 厶イ ーヘ ´/ノ. \_/. /イ } か て ノイ /i ハ { ∧丿 ん ん |/ | |\ , -‐=' 、 / な の x≦ハ| \ ー‐. / い か / ∨//| \ `7. .イ\ っ / ∨/j \ \ ; . .< '///\ ス / ∨′ \  ̄ '/////⌒ヽ、 / >x .、 \ {'/////////\
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/side by side ― バレンタイン ― 先程上条は美琴に対して喧嘩の事は自分は気にしていないと言った。 しかし上条の本音を言えばそんな訳はなく、当然初めは怒っていた。 上条が美琴を気にしているからとか、そんなことは関係ない。 美琴は自分をほったらかしにしてカエルのキャラに夢中だったので、手持ち無沙汰になった彼は満腹状態特有の眠気に特に抵抗もせずに眠っただけである。 確かに寝たのは悪かったとは思ってはいるが、それ以上に何やらよく分からない理由で突然キレられて怒らないはずがない。 上条は確かに、美琴を呼びかける前まではは怒っていた。 そう、彼女の悲しそうな、未来には絶望しかないとも言いたげ顔を見るまでは。 彼女は以前に鉄橋で見たまでとはいかずとも、少なくとも似たような雰囲気を出していた。 さっきファミレスで食事をしている時までは確かに明るく、幸せそうな雰囲気で、いつもの美琴とはまた一味違った惹かれるようなものを感じさせていたのだが、今はそのようなものの名残は微塵も感じられない。 今彼女の表情にあるのは未来への絶望と過去への後悔、そして不安。 それを見た瞬間、上条の心のうちにあった怒りなどどこかに消えてしまった。 (……なんつー顔してんだよ) 何が美琴を一変させたのだろうか。 上条に思い当たるものはファミレスでの喧嘩。 それにしてもここまでになるのかとも思うが他の心当たりはない。 恐らく喧嘩が原因で何かの感情が連鎖的につながり、結果的にここまでになる程の巨大な感情になってしまったのだろう。 その何かとは何か。 いつも彼女が自分と会うとき気にしていること、つまり自分の反応だ。 美琴は極端なまでに自分の行動に反応する。 楽しいと言えば、彼女も嬉しそうに笑い。 楽しくないと言えば、彼女は落ち込む。 それは裏を返せば、彼女の反応で自分の行動はわかる。 今は自分は何もしていない、よって今美琴をここまでにしているのは恐らく彼女の頭の中の自分の行動だ。 美琴の中の自分がこの状況を楽しくないとでも言っているのだろうか。 確かにさっきは怒っていた。 けれども、今日の事自体は上条もそれなりに楽しみにはしていた。 (俺はお前のそんな顔を見に来たんじゃねーよ……つーか、お前が笑ってないと、俺も嫌なんだよ……) それを言えば笑顔が戻るだろうか。 そう思った瞬間、上条は知らない内に美琴の名を呼んでいた。 「―――単にネックレスって言っても色々あるなぁ……んで御坂、結局どれがいいんだ?」 二人はファミレスから少し離れた大通りに出ており、御坂妹にネックレスを買ったときと同じような出店で、その店の商品を眺めていた。 出店のネックレスと言っても勿論、種類から値段まで様々な物がある。 明らかに対象年齢が低い子供向けのようなものもあれば、所謂給料三カ月分といわれそうな高級感ただよう大人なものなど。 そういう状況であることもあり、あまりそういう物に詳しくはない上条にとってはどうしても目移りしてしまい、美琴に選択を任せる。 美琴はそれを聞いて頷くが、ここに着いた時から何やら1つのものを凝視しており他のものを見ていない。 「なんだ?お前それがいいのか?」 「えっ?あっ、うん……」 「そっか、んじゃそれ買うよ」 美琴が見ていたネックレスは上条でもなんとか買える値段で、そこまで高価なものでも、少女趣味が爆発したようなものでもなく、むしろデザインとしてはシンプルなものだった。 上条は手にとってよくみるとそれは何語かも意味もわからないが『Te amo todo el tiempo』と書いてある金属製の薄い板状のものがかけてあり、色はこれ以上ないくらいの純白である。 「えっと、これでいいんだよな?」 「うん……あ、あと…」 「ん?」 「あ、アンタも、もし私が同じの買ってプレゼントしたら、その……ネックレスつけてくれる?」 何を考えているんだこいつは、と上条は内心思う。 これはさっきファミレスで奢ってもらったお礼という名目で上条が美琴に贈るものであり、言ってしまえば機嫌を少しでも良くしてもらおうと彼が思案した"作戦"である。 それなのに何故またお礼の品に対してお礼をするのかという疑問。 そしてもし受けとってしまえばまたお礼をしなくてはならないだろう、と堂々巡りになってしまうということへの不安。 これら二つの要因が重なり上条は断ろうとしていた、 「………ダメ、かな?」 (ッ!!!!) が、ここで美琴による涙目&上目遣いと、今にも不安という重圧に押しつぶされてしまいそうな彼女の弱く、心細い声が上条の心を刺激する。 そこでさらに上条は思案する。 恐らくイエスと言えば、待っているのは美琴の極上の幸せそうな笑顔と堂々巡りによる多大な出費。 そしてノーと言えば、待っているのは彼女の落ち込んだ顔と上条家の家計をの安寧。 どちらも上条にとって一長一短、メリットもデメリットもとてつもなく大きい。 故に彼は非常に困った。 彼が美琴の顔を横目で見ると、やはり表情はさっきと変わらず不安そうな顔をしている。 (御坂をとるか家計をとるか……家計はなんとかなるかもしれない。そもそもまだ堂々巡りになると決まったわけじゃねえ。ただ今のこいつは……うぅ…というか何で今日の御坂はこんないたいけな少女になってんだよ!!) 「別に、嫌なら無理はしなくてもいいからね?」 「……わかった、もし買うなら着けるよ」 「本当に?」 「ああ……どのみち、そんな顔で頼まれたら断れねーよ。」 予想通り上条が言葉を発すると、美琴は笑顔になった。 彼は喜んでいるそこへ横やりをいれるようで少し気が引けたが、今後のために念を押しておく。 「その代わり、これ以上のお礼は上条さんの財布によろしくありませんので勘弁な」 「別にいいわよ。私が買った『コレ』をアンタが着けることに意義があるんだから」 「ふーん…ま、とりあえず勘定を済ませるか」 上条には美琴の言っていることの意図はわからない。 単にペアで身に付けていたいだけなのか、他に意味があるのかもわからない。 しかし、彼はその意味はわからずとも、彼女の表情を変えれただけでも何故だか安心できた。 彼女の満面の笑顔をまた見ることができて、上条自身もまた笑顔になれた。 何故だかは彼自身よくわからないでいる。 ただなんとなく、ふとそう思えていた。 だが、その感情が意味することは、上条としてはあまり考えたくない種類の感情であるということは上条はまだ気づいていない。 だが、ただ一つだけ確実に認めたことはあった。 (やっぱり、俺はこいつの笑顔が見ていたいんだろうな) 彼女の笑顔を見て、上条は何の迷いもなく素直にそう思えた。 ―――二人は買い物を終えると、早速ネックレスを渡そうとする上条を美琴が制止して、当てもなくぶらぶらとゆっくり辺りを歩き始めた。 しかし、ゆっくり歩いてはいるものの、先ほどの買い物の後から二人の会話は続いていない。 今まで会話の主導権を握っていた美琴が黙り込んでいるためだ。 今日という日において、美琴はほぼ一日中喋りっぱなしと言ってもいいほど喋っていた。 その彼女があれから何の言葉も発しない。 上条としても、この空気は先程の彼女の表情を見た時のような嫌な感じこそないが、ただ非常に居づらい。 「……なあ御坂、お前門限は大丈夫なのか?」 「大丈夫だから、気にしないで」 沈黙に耐えきれなくなった上条がその沈黙を破ったとしても、このように美琴が一言で一蹴する。 そしてまた彼女は黙り込み、会話が続かない。 さっきからこれの繰り返しだ。 美琴は何かを真剣な表情で考えているようではあるが、上条にはわからない。 そうこうしている内に彼らは今日の待ち合わせ場所に着いていた。 ここは上条の寮と常盤台の寮のおよそ中間点。 「……なあ、することが無いのならここらで解散した方がいいんじゃないか?」 「あ……ちょ、ちょっと待ってよ」 「なんだ?まだやることあるのか?」 「えっと……とりあえずあそこに座んない?」 美琴が指差したのは自販機が置いてある場所から、少し離れた場所にあるベンチである。 美琴に言われるがまま上条はベンチの前にまで連れて行かれ、二人は拳二つ分ほどの間を空けてベンチに座った。 「ねぇ…今日って何日か知ってるわよね?」 「何日って、2月の14日だろ?」 美琴の質問に対して、上条はさも当然のように答える。 「そう、2月14日。今日はバレンタイン……」 美琴はなにやら感慨深げに呟くと、天を仰いだ。 今日の空は雲が一つなく、冬だからか人工の光に溢れている学園都市としては珍しく星が燦然と輝いていた。 その星を眺めていた美琴の横顔を、上条はそっと盗み見る。 その表情は、上条にはどこか不安と期待とが入り混じっているような複雑な表情に思えた。 しかし、どこか強張っているところも見受けられるその表情にも、上条は形容しがたい、口で言い表しにくい感情に襲われた。 それは先ほど彼女の笑顔を見たときと似たような感情。 そしてしばらくその状態が続き少しの沈黙の後、その星を見て落ち着いたのか、美琴の表情は堅いものから柔らかいものへと変わる。 そして、その表情のまま上条の前へ立つと1、2度の深呼吸の後に彼女は自分のカバンから何かを取り出した。 「というわけで、これ…」 「……あの、これは?」 「流れを読みなさいよ、バカ。この流れはどう考えてもチョコでしょうが」 美琴は顔を真っ赤に染めつつも、上条への視線は逸らさずに言い切った。 上条はそれを受けとると中から確かにほのかなチョコの香りがした。 中身を見るまでもない、これは明らかに手作りであることがわかる。 一見丁寧に包装されているが、所々で店の包装とは違う暖かさを感じさせるものがあった。 「見てわかると思うけど、それは手作りだから。……んでね、なんでそれを渡したかを、これから言うから」 そう、上条にはわからないことがあった。 それはどうして自分に渡すのか、ということ。 この日は日本中の女の子達ががそれぞれの想い人にチョコを渡して想いを告げる日。 それなのにどうしてこの御坂美琴は自分にチョコを渡したのか、彼にはわからなかった。 いや、薄々感ずいてはいるがわかりたくなかった。 しかも相手はよりにもよって、自分が気にしている御坂美琴。 ある意味彼が一番渡されたくない相手かもしれない。 上条は不幸な人間だ。 その不幸体質故に、自分が好意を向ける相手、そして自分に好意を向ける相手を不幸にしてしまうのではないかということを彼は恐れている。 自分を不幸にするために…… もしも彼女が自分を好いているのであれば、先ほど述べた条件が重なり、より不幸なことがおとずれるのではないかかとも思っている。 だから上条は美琴からはあまり好意を向けてほしくない。 なまじ自分が彼女に少しながらも好意を向けているだけに。 「あのね…私は、アンタが…上条当麻が好き。何でかとか、いつからかとか、そんなのはよくわかんない……多分、理由も挙げられないくらい好きなんだと思う。いつの間にか好きになってた、私の頭はアンタでいっぱいになってた」 「………………」 「今までずっとやきもきしてた。私はいつまでたっても素直も接することはできないし、アンタのそばにはいつも誰か女の人がいたし、しかもその女の人とも仲良さそうにしてた。だからずっと不安だった。ずっと、ずっとアンタのことを好きでいたのに、こんなにも好きでいるのにこの感情が実を結ばないじゃないかって」 上条はそのまま黙って美琴の告白を聞き続ける。 ただ、黙って。 「でも私はそんなのは絶対嫌だった。だから、ずっと好きなのに素直でいられない自分とはもうさよならするために、私自身の今後のために、その決意の証として今日本命のチョコを渡した。……私は上条当麻のことが好き、大好き。だから、だから……私と付き合ってくれませんか?」 上条が感ずいていたことは当たっていた。 同時に彼が恐れていたことが起きた。 彼女、御坂美琴が自分に恋心を抱いている。 それ自体は本当は上条の本能の部分としてはかなり嬉しいことである。 だが上条の理性はそれを許さない。 ここで受けてしまえば彼女を不幸にしてしまう。 以前に絶望した彼女を見てしまっているだけに、それだけは避けたかった。 「………返事は?」 「………ダメだ、俺はお前とは付き合えない」 「っ!!」 美琴は上条の言葉を聞いた瞬間、突如目の前が真っ暗になった気がした。 勇気を振り絞って告白した結果が、彼からの拒絶。 それは絶対に考えたくはなかったこと。 さっきの告白は勇気を振り絞ってちゃんと言った、そこに自分のミスはない。 じゃあどこで…? 「なん、で…?どうして?お願い、理由を聞かせて」 上条は上条で彼女のその声を聞いて、胸が痛んだ。 彼女の声は小さく、今にも消え入ってしまいそうなほどかすれていた。 だが上条は美琴の顔は見なかった、いや、見れなかった。 今、自分が彼女の顔を見てしまえば決意が鈍ってしまう。 上条はここは心を鬼にして答えた。 「俺はそんなにお前のことが好きじゃない。がさつで、年下なのに生意気、何かとつけてビリビリする。そんなやつとは付き合えない」 「ッ!!…嘘よ……だってあんたはさっき店の前で…」 「ああ、確かに俺は今日を楽しみにしてたと言った。だが別にそれはお前と会うこと指して言ったわけじゃない。義理チョコでももらえないかと思ったからだ」 美琴は上条の言うことを信じたくはなかった、途中からは耳を塞いで何も聞きたくなかった。 上条が自分を好きではない、遠回しに嫌いとまで言っている。 遠回しに言う辺りは彼の優しさなのだろうが、そんなものは気休めにもならない。 何かを言おうとしたが、上条はさっきから自分を見てくれていない、見たくないのかと思った。 そう思うと彼女は何も言えなかった。 大好きな彼からの手痛い拒絶。 頭は、すべての思考を停止している。 美琴は目から溢れでる涙を拭わず、背を向けてそれ以上何も言わずに走り去った。 走り去ってゆく美琴の背中を見て、上条はさっき以上に胸が痛んだ。 自分にはこれでいい、これでよかったんだ言い聞かせてはいた。 しかし、数分前とは逆に今度は理性ではなく本能の方が強く、よかったとは決して認めようとはしなかった。 理性はこれでよかったと言っている、本能は心底後悔している。 今日で彼女と会うことは終わりになってしまうのではないかとも思えてきた。 あんな酷いフリ方をしたから当然だとわかってはいても、それがどうしようもなく悲しい。 なんで自分はこんなに後悔しているんだ? 答えがくるはずもないのに、自分にそう問いかけると、不思議なことにも答えは返ってきた。 自分は実は御坂美琴が気になる程度ではなく、好きなのではないか? 案外返ってきた答えは簡単で、そう自覚すると彼女の顔、声、動作、全てがフラッシュバックする。 今思うと今日に限らず今まで彼女に会った時、笑顔を見た時はとても安心できた。 自分はこんなにも彼女を大事にしていたではないか、こんなにも好きだったではないか。 だが、もう何もかもが遅い。 気づいた時にはもう既に失っていた。 時間は決して元には戻らない。 今こうしている間にも時は過ぎる。 「御坂ッ………!!」 彼女の名前を呼んでも彼女はもうここにはいない。 遠くを見ても影も見えない。 今有るのは彼女から受け取ったバレンタインのチョコと、彼女に贈るはずだったネックレス。 恐らく、彼女はもう自分の前から現れないだろう。 あれだけ言われて、好きなまま現れるわけがない。 異常に悲しくなった上条はもらったチョコの包装をとく。 中身はチョコではなく、チョコのケーキだった。 「……美味い」 入っていたケーキは本当に美味しく、中身だけどこかの有名店のものなのではないかと思うくらいだった。 「本当に、悪いことしたかな…」 さっきのことを脳内で繰り返す。 あの彼女の声は忘れられない。 ただ、多分時間が戻っても同じことをするだろう。 それほど上条は彼女を不幸にはしたくなかった。 しかし、美琴の付き合うことによる不幸と付き合わないことによる不幸とでは、どちらが彼女にとって大きな不幸であるかは、まだ彼は知らない。 上条はまだしばらくはそのベンチからは離れたいとは思わなかった。 同日、常盤台女子寮前 「ははっ……ホント、馬鹿みたい…」 美琴はあの後走り続け、寮の前にまで来ると疲れたのか歩いていた。 「そうよね…あれだけ、雑な態度してたら嫌われるわよね…」 美琴はまだショックから抜けていない。 上条が自分を嫌っていたという事実、嫌う理由、彼女には何故だか納得できてしまった。 会う度に電撃、罵倒を重ねていけば嫌われて当然。 彼女にはもう先の事はもう何も見えない。 唯一の支えであり、想い人である上条が自分を拒絶した。 たったこれだけでも彼女を壊すのには十分過ぎる。 ポケットには彼に贈るはずだったネックレスの袋。 思えば送らなくて正解だったかもしれない。 自分を嫌っている人にはあまりにこのネックレスは重すぎる。 彼女はまだ悲しみから抜けていないものの、少しながら安堵した。 時間はもう門限をとっくに過ぎている時間であり、美琴はいつも門限破りをしたときと同じように寮の裏手にまわり、彼女の後輩の少女、白井黒子を呼ぶ。 電話をすると、すぐに黒子は美琴の前に現れた。 「……?お姉様…?何かありましたの?何やら顔色が悪そうに見えますの…」 今目の前に現れた彼女が不思議に思うほど、自分の顔はひどいらしい。 さらに彼女は自分の予定を知っている。 隠し事は無駄だと思い、何があったのか話す。 「……あのね、アンタの知っての通り、今日アイツと会ってたの……それで、帰り際に…ひくっ…アイツに告白…したんだけど……」 言葉の途中で美琴の枯れていたはずの涙がまた溢れだす。 「フラれちゃった……アイツ、私のこと…嫌いなんだって」 「なっ…!!」 あまりに黒子にとって衝撃的な事実に彼女は絶句する。 何故なら黒子は昨日上条に会っている、そして御坂美琴をどう思っているかまで聞いた。 また、それを言った上条の目には偽りの色など全くないように見えた、いや、あれはないと確信できる程真っすぐな目をしていたのを見た。 だからこそ、今日黒子は美琴がフラれるようなことは絶対ないと思ってた。 「な、なぜですの!?あの方は昨日確かに…!!」 「えっ…?昨日、何かあったの……?」 「お姉様、落ち着いて聞いて下さい。」 「う、うん」 「私は昨日上条さんに会いました。そして私は彼がお姉様をどう思っているか聞きましたの」 「なっ…!」 美琴は驚いた。 昨日の会っていたのは彼女も知っていたが、内容があまりに飛びすぎている。 言い返そうとも思ったが、今は黙って聞くことにした。 「その時、上条さんこう言いましたわ『御坂のことは気にしている』と」 「えっ…?……で、でもそっちが嘘じゃ…」 「いいえ、あれは嘘ではないと断言できますわ。それに、あの方はこの黒子が認めた方なのですから間違いないですの」 さっきの発言もなかなかに衝撃的ではあったが、この事実はそれ以上に衝撃的だった。 確かにあの時は自分の目を全く見ようともしていなかった。 それに、そもそもよく考えてみれば上条の理由には色んな矛盾点というより、多少無理があったところもある。 ではなぜあんな嘘を? 今度はその疑問が浮かび上がってきた。 「それは私にはわかりませんが、黒子に言えることはそれは確実に嘘であることですの。上条さんのことですわ、何か事情があるのかもしれません。ですからお姉様、今ならまだ間に合います、真意を確かめて来てください」 「う、うん…わかった!」 一抹の期待と、疑問とを抱いた美琴は、彼との先ほどの場所へと一目散に駆けていった。 黒子の話を聞いてから美琴の目には段々生気が戻ってきており、変わりにその目には軽い怒りが宿り始めていた。 美琴がさっき上条と別れた所まで戻ると、そこには何故だかまだ彼がいた。 そして何をしているのか、と隠れて覗いて見るとなにやら涙を流しながら自分が渡したケーキを食べていた。 (な、なんで涙流しもって食べてんのよ!……やっぱり黒子の言ってたことは…) それを美琴が見ていると、先程の後輩の言葉を思い出し、彼女はいてもたってもいられなくなっていた。 気付けば美琴は隠れていたことも忘れ、上条の前に立っていた。 「なっ…!御坂どうして…!!」 「聞いたわよ…黒子に…」 上条はいきなり現れるはずかないと思っていた美琴が目の前に現れたことにより混乱していた。 そんな中、彼女の発言。 上条は昨日の黒子と何かを思い出す。 思い出したのは、約束を守る覚悟があるかどうか、御坂美琴をどう思っているか…… 「ッ!!」 「アンタ……嘘ついてるのは私と黒子、どっちなわけ?」 「そ、それは……」 「私の目を見て答えなさい!!!」 上条は美琴の質問に対して、目を逸らそうとしていた。 だが、そこへ美琴が一喝する。 それにより上条は背筋を伸ばし、美琴の目を見る。 彼はもう逃げられないと思ったのか、小さいため息をついて、さっきとは打って変わってしっかり美琴を睨みながら答える。 「……ああ、そうだよ…白井の言った通り、俺はお前が、御坂美琴が好きだよ!」 それは美琴がずっと聞きたかった言葉であった。 彼女はそれ自体はとても嬉しいと思った。 だが、そうなるとやはり一つ疑問が浮き上がってくる。 「なんで、さっきは嘘吐いたの…?」 「……」 「アンタのことだから何か事情があるんだろうって黒子は言ってた。私もそう思う。……お願い、教えて」 美琴はさっきまでとはいかずとも、声はどこか力がない。 上条としても、もうこれ以上は美琴のこんな声は聞きたくなかった。 「理由は…俺が不幸だからだ」 「……?」 「俺はさ、怖いんだよ。俺が誰かを想い、誰かに想われることでその誰かに不幸が訪れてしまうことが…。別に実例があるわけじゃないし、そうならないかもしれない。……けど、怖いんだよ、嫌なんだよ」 理由を聞いてみればやはり、上条らしいとも言える理由だった。 他人を気遣うあまり、自分を省みないところ。 そして自分が救った後の相手の気持ちをろくに考えていないところが。 美琴は彼の恐れていることは真っ当な意見だとも思った。 それでも、彼女は上条に対して怒りを覚えずにはいられなかった。 「だから俺はわざとあんな言い方をした。お前を遠ざけて、お前の俺への好意をなくさせることで……」 「バカ!!」 「は…?」 「アンタ、本当にバカ。なんでそんな重大なことを自己完結しちゃってんの?……アンタが、私にああ言ったときどれだけ傷ついたと思ってんの?」 美琴の内から溢れる上条への怒りと想いが彼女を支配する。 今、美琴は止まらない。 「好き合うことで起こる不幸?そんなの、アンタにあんなことを言われた不幸に比べれば何でもないわよ!!どうして断る前に相談してくれなかったの?私が話を聞いてからでも遅くはないでしょう!?」 彼女の感情が益々高ぶる。 声は段々と大きくなってゆき、今日何度目かの涙も流していた。 「私は…アンタと一緒にいられない方が嫌。アンタにあんな言い方される方がずっと嫌。もし本当にアンタが私のことが好きで、もし本当に私の幸せを願うなら……!!」 「御坂!!」 美琴は涙を流しているのを隠すために俯いていたため、突然自分を覆ったものが何か理解できなかった。 だが、涙を流しつつも顔を上げるとそこには辛そうな表情をした上条の顔があり、そこでようやく自分の状況を理解できた。 美琴は今上条に抱きしめられている。 それを理解した彼女は話すのをやめ、上条の背中へと手をまわすと、顔を彼の胸にうずめ、大人しくなった。 今は間近に感じられる上条の温もりを、存在をより味わうために。 「ごめん、俺なりのお前を想う気持ちの行動が逆にお前をより苦しめることになるとは思わなかった」 「……」 「こんな、こんな俺だけど……俺と付き合ってくれるか?」 「……始めからそう言ってるし、しかも私はアンタ…と、当麻じゃないと嫌なんだから」 「そっか……じゃあ御坂…いや、美琴。俺と付き合うことでお前に不幸が起こるかもしれない、それ自体は俺自身はあまりよしとは思わない。けどだ」 彼は一旦言葉切る。 そして今度は腕の中にいる美琴の目をしっかりと見ながら、 「お前が俺と離れることがより大きな不幸だと言うなら、俺はいつでもお前のそばにいてやる。たとえお前に不幸が起きても、だ」 「うん……私も…たとえ不幸が起きても、アンタのそばは絶対に離れない。……それが、私にとっての一番の幸福だから…」 そう言うと、しばらくの間二人は黙りながらお互いに見つめ合い、 ―――次第に二人の影の距離をゼロにした。 夜空の星は依然として、燦然と輝いていた。 まるで、今結ばれた2人を祝福するかのように… 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/side by side